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明後日は死ぬ。  作者: 彼方夢
第三章 死刑台のメロディー

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33/39

上手く出来すぎている。

 どうする……どうする……考えろ。

 自宅で椅子に座ってコーヒーに角砂糖を入れている。こうすることが、俺にとって思考を整理することでのルーティンでもあるからだ。


 二個。三個。四個……

 そう言えば片桐大三郎の書籍の件は結局どうなった。

 奈央に連絡をかける。


「どうしたの?」

「気を悪くさせるつもりはないんだが、お父さんの本の話、どうなってる?」

「書くことになったよ」

「知っている話でいいんだが……どういった内容?」

「えっとね、この前爆破テロが起こったでしょ。それを“ありのまま書け”って」

「ありのまま?」

「姫島聡容疑者のこととか。その人が犯行を起こした要因である火力発電所への陰謀論をね」

「……それって」

「奴が起こした理由はやれデフレだとか、環境問題とかね。分かるでしょ?」


 どこか彼女は怒っている。もちろん、俺も。


「姫島さんは活動家じゃない。唯の探偵だ」

「分かっているわよ。そんなことぐらい。現状、文科省からの推薦をお父さんが受けていて、それが出来なかったら糾弾されて文壇から追い出されるのよ」

「そうなのか」

「いい。きっと、いまはみな絞首台に上っているのよ。下りれば死ぬし、引き返せれば死なない。そんな人類そのものの歴史が、ニコラとバートなのかもね」

「全員、死刑と隣り合わせか」

「でもそれを変えてくれるのが、司法であり、かつ探偵なのだと思う。頑張って」


 通話が切れた。


『平和を享受することを、人間が受け入れたいと思えたときにできるように一緒に活動をしようという約束』そのモットーを基に考えるのなら、人を裁ける手助けも出来て、かつ、人に花束も渡せる。その職の最先端が、『探偵』ではないのか。



 ――それとひとつ引っかかるな。

 姫島聡のことを書籍に書け。火力発電の陰謀論とともに。

 文芸というのは公平。公正でなければならないはずだ。

 それが左翼的な著作になってしまうのではあれば、片桐は大きく言えば芥川賞への愚弄であるし。それこそが糾弾されるべきものだ。

 一番そのことを理解しているはずの片桐が書くという選択をしたことに、なにか俺が見落としている理由があるのではないか。

 ……まさか、火力発電所への爆破テロも、それを著わした書籍の執筆をさせることも。すべて政府が仕組んでいるとでも。

 馬鹿な。でも、それくらい上手く出来すぎている。

 でも、だとしたら相手の質が悪い。


 本当に首を括る必要が出てきたな。


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