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明後日は死ぬ。  作者: 彼方夢
第三章 死刑台のメロディー

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約束、死刑台へのステップ

 JRのアナウンスにより、運行を停止した笹木野駅。そこは無人駅で、ボックスには俺とフードを被った姫島がいる。

「これ、近くのコンビニで買ったお茶と肉饅にくまんです」

「サンキュ」

「羊羹は売っていませんでした」

「最近、おでんも売ってないよな」

「世の中も、狭く、寂しくなりましたね」


 姫島が俺の肩を小突いてくる。


「お前はまだそう長く生きていないだろ」

「たしかに」


 煙草に火を点ける。紫煙は登る。


「お前にも迷惑かけたな」

「いいですよ。ちょっと面白いし。――それよりも、話聞かせてくださいよ」

「なんの話だ?」

「綾川 翔さんとの約束の話です」


 姫島さんは、二本目の煙草に火を点けてしっかり吸い込んでいるようだった。そうして思考を整理するかのように。


「『平和を享受することを、人間が受け入れたいと思えたときにできるように一緒に活動をしようという約束』だ」 

「えらく文学的ですね」

「まぁな。……この言葉の意味分かるか?」

「――えっと、人が平和になりたいと願ったときに平和になれるようにする、かな?」

「概ね正解だ」

「でもそれをするためにどんな行動を?」

「……それこそが探偵業だよ。人の捜索、警察との協力や事件を解決――」

「たしかに平和を維持し続ければ、享受したくなったとき出来ますものね」


 姫島さんは立ち上がり、煙草を灰皿に捨てた。


「そのはずだった、のだが」

 朝日が麓から昇って来る。そしたら始発のアナウンスが鳴る。

「まさか、こんなことになるなんて……」

「俺、納得いかないです。“あいつら”調子に乗りやがって」

「大丈夫だ。いいか、ニコラとバートを忘れるな」

「え?」

 けたたましい轟音が鳴った。喫煙ボックスを飛び出したとき、業火が橘湾火力発電所に広がっている。黒煙もおびただしい。

「結局はしないって約束じゃなかったですか。姫島さん!」

 だが、周囲に視線を彷徨わせても駆け付けた駅員しかいなかった。

「姫島……姫島!」

 このままじゃあ本当に死刑台に登ることになるぞ。



 



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