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明後日は死ぬ。  作者: 彼方夢
第一章 ガーターベルト殺人事件

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3/39

興奮

 彼女の名前は片桐奈央。背丈は俺と同じくらい。端正な顔立ちに、目元には涙黒子。豊満な胸。窮屈そうなブレザー。そしてスカートから伸びる太ももにはガーターベルト。

「あの……」

「はい?」

「お兄さん……お名前は?」

「攻城椎名。そこの成宮高校に通う高二」

「あっ、あの偏差値65の都内トップクラスの!」

「まあまあ言うなって。――君は?」

「私は平均ぐらいだよ。学力も……頭の良さも」

「見た目は百点満点だけどな」

「はい?」

「いや、なんでもない。そうだ。忘れ物がどんなものか知りたい。詳しく教えてもらえるか?」

「ポーチ。スマホとか財布とかが入っている」

「え? は?」


 この女はそんな貴重品を落として、今のんびり珈琲を啜っているのか。すごい根性だな。

 俺は腕時計を確認する。


「もう深夜二時を回っているぞ。どうする?」

「朝になれば日差しも刺すでしょう」

「危ないだろ。……スマホがないから友人の家にも行けないのか」

「……はい」

「仕方ない……警察署に――」

「椎名さんのお宅に行けないでしょうか」

「はいはい」

「あっ、店員さん。マルゲリータ―三つ。コーラの瓶もふたつ!」


 大食漢なのか、奈央はひとりでピザ二つ半を食し、瓶コーラを一封開けた。サイズが苦しくなったのかガーターベルトのサイズを調整する。


「ご馳走様です」

「はいはい」


 数万円ほど彼女に渡して、後日返金してもらうというのはやめておこう。これは大きなチャンスだ。もしかすればこれを機に恋人ができるかもしれない。

 山手線に揺られ、それから数十分。駅校舎から出ると高層マンションが見えてくる。

 オートマンションの鍵を開けて奈央を連れて二十階へと目指す。

 この道中、奈央はずっと「すごーい」という言葉を連呼していた。


「東京の家なんてこんなもんだろ」

「全然違うよ」

「全然違うのか……」


 俺はタッチキーで鍵を開ける。奈央に「どうぞ」と言い、部屋に招き入れる。

 部屋はソファに大型TV。そして本棚に大量の推理小説が並べられている。


「何か飲むか?」

「なんでも」

「じゃあさ、カルピスでも淹れるわ」

「うん」


 コップを奈央の前に置いてやり、それからTVを点けると連続殺人犯の報道が流れていた。

 どうやら犯人はガーターベルトを身に着けた女性を目星にしているらしく、女性の方は着用を控えるようにと注意喚起されている。


「これってさ、おっさんがガーターベルト身に付けていたらどうなるのかな」

「さあ?」

「……というかお前! 付けているじゃないか! どうすんだよ」


 肩を竦める奈央を見て、俺は困惑した。

 腰に手を置いて俺を見下ろす。


「成人女性の十五パーセント――1000万人もガーターベルトを好んで着用する人がいるのよ」

「なにが言いたい」

「いたちごっこよ」

 まあどうでもいいけど……

 奈央が風呂に入っている間、俺はベッドに寝転がっていた。

 そのまま眠りに落ちる。



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