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明後日は死ぬ。  作者: 彼方夢
第三章 死刑台のメロディー

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犯行声明。あの頃を、

 一か月後。怒り心頭で奈央が姫島探偵事務所へとやって来る。


「どうかされましたか?」

「どういうことなの? お父さんは結局、本を出すことになるじゃない!」

「ああ。女がらみの」


「女がらみ?」奈央の眉根が釣り上がる。


 姫島は奈央を落ち着かせるためにもコーヒーを、そして水ようかんを出した。


「で、椎名くんはどこ?」

「ちょっと野暮用でして」

「野暮用……。で、どうしてお父さんは本を出すことになったの。依頼したじゃない!」

「そもそもですね。国を相手取っての仕事は前例が極端に少ないですし、それにお父さんには著作権がありますよね」

「あるわ」

「一切の著作の権利を甲に追うものとする。本を出すのも出さないのも結局はあなたのお父さんの権利なんですよ。分かりますか?」

「――っ」


 姫島はコーヒーを啜ってから、


「まだなにか?」


 奈央はバッグを肩に掛けて帰っていった。


「あっ、依頼料は返しま――聞いてねえな」

 するとスマホに着信があった。お目当ての人物からだ。


「あっ、もしもし。さっきお前の恋人が来ていたぞ?」

「え?」

「即答できないのはいる証拠だな」

「くだらない冗談言ってないで。――今から現地報告します。福島第一原発周辺はかなりの警備ですね。どうします?」

「どうしようもないだろ。俺たちはやると決めたらやるんだから」

「そうなんですね。じゃあもう電話切りますね。面倒臭いんで」



 椎名からの連絡が切れてから姫島は窓を開けた。

 池袋テナントビル三階から始まった。

 どんどん拡張したい。救える命はどれだけあってもいい。

 ――そのために今回だけ手を汚すだけだ。

 この何とも言えない余韻をさらに良いものにするために音楽でも聴こうか。

 ……そう言えば前に椎名が『死刑台のメロディ』を観に行ったとか。あの曲を聴こう。

 動画サイトで聴いていたのだが段々と腹が立って視聴を辞めた。

 いや違う。本当は怖いんだ。自分が絞首台に登ることが。


 冤罪なのに。世間はそれを信じてはくれなくて。

 弁護士も検事も誰も相手にしてくれなかった少年のことを思い出したのだが、彼は元気にやっているだろうか。俺が――姫島が探偵を志した大きな理由でもある少年。

 なんのために探偵をやっているのだろうな、今は。

 ニコラとバートは死刑台にあがるとき、やはり悲しかっただろうか。それとも――


 かぶりを振って煙草に火を点けた。

「この俺が原発をぶっ壊す」



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