丁か半か。
「先生。一杯どうぞ」
「いえ、私は……医者に止められておりますので。ここら辺で」
「そうですか。――話は戻りますが、いやあ、広野火力発電所に対するテロ未遂のおかげで原発を再利用できる」
政治家や暴力団が“表立って”利用できない際に宛がわれる旅館「藩屋」
片桐大三郎は縮こまって目の前の文科省と総務省の使い走りの傾聴をするほかない。
「テロ未遂があった方が、世論を動かしやすいということですか」
やっとのことで絞り出せた言葉を簡単に同調した高級官僚。
「ええ。そうです。世の連中は日々資源に被っているはずなのに、なにかあれば根源叩きをしたがる。言っておくがどんなものでもリスクはあるんだ。それを逆手にとってまったく世間様ときたら……」
総務省の人間が大分と酔っぱらってきた。焼酎三合はすでに完酒しているのではないだろうか。
「この店、良いでしょ」
「え、ええ」
「一九三七年に開店した博徒組山口組系列の店らしいんだ。ぜんぜん見えないよね」
「あっ、それで店の名前が」
「そう。藩屋。半をもじったんだろうね。そのままじゃあさすがに屋号には使えないからね」
文科省の人間が大三郎のグラスに並々日本酒を注いだ。
「先生。もしこの件断ったら文芸界から『追い出し』でしょうね。そうなれば、娘さんも悲しむのではないですか」
「お前っ!」
「そうだな。おい舞子を呼べ」
二十代後半の舞子が座敷に呼ばれたため現れた。
「先生、私と丁場をしましょうよ。これで私が負ければ書籍の話は無かったことに」
「本当なんだな。本当に!」
「ええ。私は嘘を吐きません」
舞子は手際よく二個のサイコロをグラスに入れて、その出目和を問うた。
結果は――
丁場賭博…「山口組三代目」で見たことはあるけれども、あれは楽しいのか?




