Here‘s To You
八月の二週目。俺は奈央とともに映画館デートをする予定であった。
レイトショウが始まるまで喫茶店でコーヒーを嗜みつつ、予定時間が到達したら新宿ピカバリーへ向かいそこで奈央きっての『死刑台のメロディ』を観る。
冤罪により二人もの人間が死刑に処されたということにより、観賞後、暗い気持ちになった。やはりというか何というか、何と表現したら良いかわからない感情にとらわれたまま。
そして、皮肉な歌でもある『Here`s To You』で映画は幕を締められる。
上映後、虚ろな観客者らとレイトショーを後にした。
児童公園で俺と奈央はコーラを購入する。
「あの映画、なにが伝えたかったんだろう」
「私にもかなり難しかった。でも、なにか掴めそうで掴めない、そんなもどかしさが楽しい」
さすが文豪の血筋。創作物の読解力も遺伝か。
「でも、あの話って信じるものは結局裏切りを覚悟しなければならない。関係性にも、機関にも『絶対』は無い、ということじゃないかしら」
「それって……?」
「それは簡単に言えばこういうことよ」
奈央は俺に口付けする。
そんなことされれば、呆けてしまうに決まっている。
「じゃあね」
奈央は去っていく。
そのとき、『Here`s To You』の歌詞がフラッシュバックする。
『――最後の時はあなた方の物。
その苦しみはあなた方の勝利。
さあ今 ニコラとバート。
あなた方は私たちの心の奥に眠る。
死ぬ時は孤独だっただろう。
でもあなた方は死を克服した――』
やはり、あの映画は俺には難しい。




