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明後日は死ぬ。  作者: 彼方夢
第三章 死刑台のメロディー

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アナーキスト(無政府主義者)

 片桐奈央に呼ばれて大三郎宅に預かることになる。粗品を渡し俺は客間で居心地の悪さを感じていた。

 すると奈央が微笑みながらコップを運ぶ。渡されたことに礼を言い、その麦茶を半分ほど飲む。からころん。と風流な氷と氷の摩擦の音が鳴る。


「で、どうかしたのか?」

「うちのお父さん。親戚に中部電力のお偉いさんがいるのよ。文科省とも通々(つうつう)で。でね、今回のテロ未遂のことを本に書けば読売文学賞への推薦文をよこしてやる、と」

「読売文学賞ってなんだ?」

「日本で最も権威ある文学賞のこと」


 文芸界は権威主義に凝り固まっているなぁ。


「なら本を書くという方向で行くのか?」


 奈央は首を振った。


「中部電力に何ら関する書籍を出した場合、出版に関わるすべてが税金になってしまうかもしれないのよ」

「なるほどなぁ」


 税金の恩恵に預かるべき人間でも抵抗があるのか。


「あとはまぁ、これが大きな原因なんだけど……イメージが付くのが嫌なのよ」

「中部電力専門家という肩書か……そりゃあ嫌だな」

「――で、話なのだけど椎名くん、探偵事務所でバイトしているでしょ」

「う、うん。そうだよ。よく知っているな」

「君のことだもん。で、中部電力方面の“御偉いさん”について調査してくれない? 依頼料は……」


 奈央はそう言いつつ俺の大腿に触れてくる。少しくすぐったくてすぐに観念してしまった。


「分かった。でも調査して何をすればいい?」

「お父さんに近付いた目的と、それが判明したら依頼するのを辞めるように促して」

「……分かったよ」

 なんだか納得行かないが受けてしまったものは仕方ない。



「女がらみか」

 姫島探偵事務所に戻ってきて依頼内容を喋ると、真っ先に姫島さんに言われた言葉がそれだ。嫌になってしまう。

「でもでかしたぞ。中部地方の偉いやつと相好関係を築ければ事務所のネットワークも広がる」

「ネットワークを広げたらどうするんですか?」

「全国に姫島探偵事務所を開設するんだ。そして大儲けだ」

「大儲けしてなにに使うんですか? 学生の自分にはうまく想像が出来なくて……」

「そりゃあお前――甘味処で水ようかんをたらふく食べるんだろうよ」

「……」


 先ほどの自分の言葉とは、大きく矛盾するが学生の自分でもマシな金の使い道を考えられるぞ。


「じゃあ奈央さんに頼んで偉いさんにつなげてくれ」

「分かりました」


 ラインで奈央に向けてメッセージを送る。するとすぐに「了解」の返信が返って来た。その数分後。「映画観に行かない? 『死刑台のメロディ』っていう映画なんだけど」という内容が送られてきた」

「あの……」

「なんだ」

「『死刑台のメロディ』って面白いんですか?」

「名作C級映画だ。ぜひ観るんだな」

「反応に困る映画だな。面白いのかつまらないのかどっちなんだ」

 結局、奈央と一緒に行けるならどこへでも、という飼い主根性で映画へと来週行くことにした。




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