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明後日は死ぬ。  作者: 彼方夢
第二章 ラブホテル階層事件

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生半可な人生は嫌だ

「犯人、見つかったな」

 友樹はつまらなさそうに言った。折り鶴を作っているほどには暇なのだろう。

「そうだな」

「どうするよ」

「ん?」

「また新しい事件探すか?」

「そうだな」

「……今回捕まった犯人は男だったらしい。だがねずみはジョーカーを女だと言った」


 友樹が俺のことを見据える。


「どっちが本当だ?」

「分からないな。警察に従うしかないだろ」

「どうせ俺たちは探偵だもんな」

「おいよせ。俺たちは探偵じゃない。探偵同好会だ。結局は風情なんだよ」

 彼は舌打ちし、「つまらねぇ」と言い折り鶴を飛ばした。折り鶴は滑空しながら床に落ちる。

「なにか糸口はないのか?」

「……ひとつだけあるよ」

 麗の言葉が俺らの注目を浴びる。

「またひとり殺されれば今捕まっている男は無罪放免。警察は面子をつぶされたと躍起になって捜査を再開する」

「それしかないのか……」

「一度起訴してしまっている以上、確固たる証拠がないと警察は覆らない。司法というのはそういうものなんだよ」

 三人は溜息を吐く。

「どうするよ。待つしかないのか」

「――犯人は違うのに……」

「いや、それも分からないぞ。警察も起訴するのにがっちりと証拠を固めていただろうからな。奴らにはそれとした根拠があったから動いた」

「まぁそりゃあそうだよな……」

 麗も友樹の真似をして折り鶴を飛ばした。だが碌に飛びもしなかった。



 赤嶋霧花は今日の晩御飯なにしようかなと考えつつバックをしていた。中年の喘ぎ声を聞きながらいつ終わるのかと絶望感も時折覗いてくる。

 ラブホから出るときに「またラインするね」と嘘を言い去る。

 スマホで代わりにすることはクックパッドを調べることだ。

 三歳の妹はきっと今頃腹を空かせているだろうから。

 ピコン。ラインの着信だ。「五万円払うからテクニシャンビルに来てほしい」と書いてある。テクニシャンビルとは十五階建ての大型ラブホだ。

 霧花は舌打ちする。どれだけ性欲強いんだよ。

 三歳の妹に「もうちょっとしたら帰るから。今日の晩御飯は唐揚げだよ」とメッセージを送る。

 最近のラインの機能で読み上げ機能があるのだ。これのおかげで三歳でも伝わるのだ。

 息を吐いてテクニシャンビルへと向かった。



 夕食の席。俺はポテトサラダに箸を伸ばそうとしたところだった。

 TVの報道では大型ラブホテルでの絞殺事件があったそうだ。

「ごちそうさま――」

 自室に入ると真っ先にパソコンの電源を点け、ラブホ絞殺事件について調べる。

『パパ活女子が中年男性の私怨によって殺された』

 その煽り文句がどの記事にも踊っていた。そして、こうも書かれていた。

『不埒な女に鉄槌を下す審判者』

 ラブホ事件のことを神格化する者まで出てきた。ネット掲示板での非モテ男性からは英雄だ。

「ん? 待てよ……」

 赤嶋霧花(十七)私立成宮学園生徒。

「うちの学園じゃないか……」

 ということは俺の高校でもパパ活網が構築されており、それをつまみ食い感覚で触れた麗の件はもしかするとかなり危険だったということなのか。

 俺は大きく背もたれに身体を預けた。

 もうしくじれないな。

 ……魔境にはもう足を踏み入れている。戻れない。

 少し妙案があったため連絡をかける。すぐにかかった。


「はい。どうかされたんですか?」

「麗、TVの報道は視たか?」

「はい……」

「彼女と関係は?」

「いえ……」

「分かった。今からお前に嫌な気持ちにさせることを言うぞ。気が変わったらすぐに通話を切れ」

「……はい」

「成宮学園ではかなりの女子がパパ活を使っているだろう。そしてそれを犯人も理解し、狙っている。お前は同性だ。パパ活女子から情報を集められるはずだ。頼めるか?」

「……もし嫌だって言ったら?」

「その気持ちを尊重させてもらう」

「――分かりました。やりましょう」

「えっ、いいのか。どうして?」

「刺激的な学生生活を送りたかったんですよ。“終わってから後悔する”生半可な人生よりもね」

「……ありがとうな」

 通話を切る。そしてもう一度礼を言った。


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