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明後日は死ぬ。  作者: 彼方夢
第二章 ラブホテル階層事件

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憧れの人とラブホ

 同好会の部室に香苗先生が訪れる。少し顔は険しい。

「昨日、なかなか無理をやったそうじゃないの」

「すみません……」

「今後、こういうことが増えると同好会の存続が危ういからね」

「はい……」

「今日、麗さんは休みを取っている。……ただでさえ彼女は――」

「ん?」

「いや、なんでもない」


 香苗先生は言い終えると部室を後にした。


「俺らも帰るか」

「そうだな」

「むさくるしいところに男二人いてもあれだしな」

 校舎から出てただぽつぽつと歩いていた。

「椎名くん」

 駅前の広場で“彼女”はスマホから目線を上げたところに、俺と目が合った。

「麗美さん」

 天沢麗美。俺の憧れの女性。

「こんなところで何しているんですか?」  


 駅前は混雑している。けれどそれに比例するようにアミューズメント施設は多い。いくらでもこの場にいる理由ならあるだろうに。

 この人を前にすると頭が回らない。


「ねぇ……遊ぼうよ」

「俺とですか?」

 すると麗美は挑むような目を投げかけてくる。

「そう。あなたと」

 かぁっと全身の血液が沸騰したみたいに体が熱い。辛い。でも、この辛さが還って快楽だ。

「分かりました……どこに行きます?」

 彼女が指差した場所は大人の遊楽亭――ラブホテルだった。

「本気ですか?」

「私はいつだって本気よ」

 女性にこう言われてしまってはもう逃げ道はない。腹をくくった。

 



 衣擦れ音。俺は麗美と口付けをしていた。そして陰部に手を入れた瞬間、彼女の赤く甘美な表情が男を刺激する。

 このままどこまでも……そう思っていたのに、どこかのフロアで悲鳴が上がった。

 麗美は這いつくばった姿勢から立ち上がり、スマホでどこかに連絡をかけた。

「着替えなさい」

「え?」

「早く!」

 すっかりホテルの周りを警察車両が包囲した。

「囮捜査、お疲れ様です」

 廊下に出ると、男性刑事が麗美に敬礼をする。 

「ジョーカーは?」

「確保しました」

「取り調べでみっちり調べないとね」

「では」

 刑事がどこかに行く。この場には俺と麗美だけ。

「騙したんですか?」

「ごめんなさい。仕事のためだったから」

「俺……麗美さんのこと、中学の時から好きだったんですよ」

「ええ」

 中学時代。バスケ部の先輩のしごきに耐えられなくて、毎日校舎裏で泣いていたら二年上のマネージャーだった麗美がいつも励ましてくれた。そのおかげで俺は立ち直れた。

「……刑事になったんですね」

「うん。どう?」

「似合わないっすよ」

 悪口がするすると口から出る。これ以上この人の前にいるべきじゃない。取り返しが出来ない確執を生んでしまうことになる。俺は踵を返した。

「頑張って。少年」

 涙が出ていたことに気付いたのは、月を見上げたときだった。




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