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明後日は死ぬ。  作者: 彼方夢
第二章 ラブホテル階層事件

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フロア殺人

 同好会に復帰してくださることになった香苗先生。「あんまり事件とかもう物騒なことを聞きたくもないのだけれども……」と言いつつも顧問というのが必要なため、という理由らしい。だから席だけ顧問でいるらしく部室には現れないそうだ。理解してはいるが人数が減るのは寂しいな。

 麗と友樹はふたりでトランプをしている。こいつら仲が良いのか悪いのかよく分からないな。

 俺はふたりに「話を聞け」と諭した。


「実は……昨日、なりゆきでラブホテルに行くことになった」

「はぁ? なに急に自慢話をしているのだか……! 馬鹿になったのか」

「そこで、俺らの五つ隣の部屋で刺殺だよ。有り得ねぇよ……ったく」

「……まぁ、俺さバイト代入ったからさ。椎名の見舞い代として三人で飯でも行かないか」


 へらへらと笑ってそんな有難いことを言ってくれる友樹と友人でよかった。


「……私もいいの?」

 麗が心配そうな表情で友樹を覗き込むと、

「当たり前だろ。お前ももう友達なんだから」

 と言われ隠しきれていない喜びの顔。

 そして午後七時。ステーキ伏屋という新宿三丁目にある飯屋を探していると俺は女性と勢いよく肩がぶつかった。

「大丈夫か?」

「……ああ。ごめん」


 女性はかなり急いでいたのかこちらを一瞥もしなかった。失礼な人だなと思いつつ、俺は意識を変えた。

 ステーキ伏屋は鉄板で焼ける五〇〇グラムのサーロインステーキが目玉商品らしい。店内では俺らのほかにも居て賑わっていた。

 さすがに五〇〇グラムをひとりでは食いきれないので、三等分する。

 舌に乗せると、ガーリックと胡椒の刺激。今まで食べてきた肉料理の中では格別に美味い。


「あっ、あなたたち!」


 甲高い声が店内に響く。そのことに内心不愉快だなと思いつつ、ちらっと時計を確認すると十時を過ぎていた。こりゃあ高校に通報だな。

「駄目でしょう。学生がこんな店来ちゃあ――あれ、椎名くんじゃない」

 俺も顔を見て驚いた。「奈央さんじゃないですか!」


 すると奈央は店主とやり取りを始めだした。聞き耳を立てていると、「席を一緒でもいいか」「勘定はこちらで持つ」「保護者代理として……」といろいろと便宜を図ってもらっているらしい。なんともまぁ面目ない。

 奈央が俺の横に座り、おつまみを注文した。


「ここのステーキ、美味しいでしょ」

「はいっ、最高です! ついでにお姉さんも最高です!」

「えぇー私はついでなの?」

「い、いや、その……」

 本当に奈央はここではついでの女だし、この食事の席は俺への慰安でなかったのか。友樹は女が絡んでくると一気に不良品になるな。

「学校ではどんな部活をしているの?」

「探偵同好会です?」

「アガサ・クリスティ?」

「い、いえ。そんな大層なものではなくて……」

「――なんかよく分からないわ」


 ああ、その意見は俺も同感だ。いまの説明では全く理解しがたいだろう。

 よし、ここでは俺が――そう思い腕をまくろうとしたその瞬間、店内にあったテレビから事件が報道された。


『アテンシャスホテルの三階で殺人事件が起こりました。犯人は未だ見つかっておらず――』


「ねぇ……椎名くん。これって」

「ああ。間違いないと思う」

 極楽ピエロで殺害された現場は三階。そのアテンシャスホテルも三階。きっと犯人が行おうとしているのは……


「フロア殺害――」


 友樹がまだ事態をつかみ切れておらず、呆けた顔をしている。

「いいか。ラブホって平均多くても何部屋の何フロアあると思う?」

「最大でも十階のビルラブホテルを殺害現場の考慮地に入れるのは癪だが、そうなれば大量殺害事件がすでに起きているのだぞ!」

「そんなこと……俺らが知ったところで……」

「友樹くん。私たちのこと忘れましたか?」

「えぇ?」

「探偵同好会ですよ。まず聞き込みから行きましょう」

 話もまとまったところだし、動こうとしたのだが満腹ですぐには出来なかった。


 サーロイン、手強し。


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