命母の神
「お前、”不象者”だろ?」
ベルの一言にイザベラの目つきが一気に鋭くなる。
「…わかるの?」
「確かにお前は印っぽい形をとってそれっぽく見せてはいるが、実際に体に変化があるわけでもないし、なによりお前のエネルギー制御に偏向性がない。一般人程度なら騙せるだろうが。」
「さあ!!ついにレベル4帯、決勝戦です!!!」
実況の声、客たちの歓声は今この二人には届いていない。
「お前3回優勝してるだろ?願い事は何にしたんだ?」
「…してない。」
「は?」
「願い事してないわ。」
「それ、これやる意味なくね。」
「あなたに言っても関係ないわよ。」
「まあ、それもそうだな。」
「イザベラは何のために闘技に参加してたの?」
「一説では、不象者である自分の名を世界に広めるためだと言われているな。この世界の不象者たちはずっと差別されてきた。だからこそ、不象者が闘技で優勝し続けているという事実を作って世間の不象者へのイメージを払拭しようとしていたらしい。」
「でも、イザベラは象者の振りをしてたんでしょ?」
「不象者と申告したら闘技に参加できない可能性を考えたのだろう。不象者という事実を打ち明けるのは自分の名が完全に広まりきってからの方が実に合理的だ。だからこそ、イザベラは勝ち続けなければならなかったんだ。」
「イザベラ・トゥルーハート対、ベル・グレイ!!!!レディイイイイイイイイ!!!!ファアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
「ここで負けるわけにはいかないのよ。大人しく負けてよ。」
「俺にもやることあるんだわ。」
互いに武器を構える。レイピアと直剣。身軽さを追求したハイテンポな試合。
「私たちが本気でやり合ったらこの闘技場どころの話じゃなくなるわよ。」
「知らね。レベルを申告制にした運営側が悪い。ヴァラーハがどうにかしてくれるだろ。」
2人は同時に前に出る。もう手加減は終わり。本気でやらねばすぐに死ぬ。
ぶつかり合った金属が火花を散らす。その衝撃で会場全体に突風と亀裂が走る。ヴァラーハはもう二人の正体に気付いているだろうが、あえて止めはしなかった。理由は簡単、”おもしろそうだから”。目の前の二人はリベラ国出身。戦いで死人が出ようがシャルマ国に不利益は存在しない。プリトヴィーの人気をあげる広告でしかないのだ。二人は刃を交え続ける。あまりにも速すぎて観客たちは目で追うことができない。
「あなたは何のためにここにいるのよ。」
「お前は答えないくせに俺には色々聞いて来るんだな。」
闘技場の面積4.3万㎡をフルで使う戦いに客たちは盛り上がる。
「ヴァラーハが仕事もせずにこんな変な闘技開催してっから、お叱りに来たんだよ。」
「そんなの闘技に参加する必要ないじゃない。」
「願い事でこれ言ったら大人しく言うこと聞いてくれると思ったんだよ。」
「そんなことのために嘘ついてまで闘技に参加して来ないで。」
「”そんなこと”?俺にとっては重要だわ。」
「不象者の気持ちもわからないくせに!」
「わかるけど。俺一応不象者だったし。」
「え?…」
困惑して動きが止まったイザベラの腹をベルは蹴る。勢いよく吹き飛ばされたイザベラはプリトヴィーの反対側の壁まで突っ込む。不敗のイザベラが初めて大きなダメージを負う。崩れた土の中からイザベラが高速で飛び出して、ベルの下まで間合いを詰める。ベルは飛んで来たイザベラの一撃を難なく身一つで止める。
「”不象者だった”ってどういうこと!」
「俺もまだ確証は得られてねえよ。」
「何をしたの!」
「だからわからねえって。」
イザベラの力はどんどん強くなる。これは希望への興奮なのか、抜け駆けへの怒りなのか。
「ずっと思っていたが、そのエネルギー制御は生まれつきか?」
「そんなわけないでしょ。」
イザベラは不象者だ。普通はここまで呼吸をするかのようにエネルギー制御をすることはできないはずだった。
イザベラは鍛え続けた。才能を言い訳にしなかった。一人の不象者として、努力1つで象者を超えようとしたのだ。今やその努力は実を結び、象者であるベル相手にここまで戦えるようになった。努力を極めた社会的弱者の抵抗の剣。それが、”イザベラ・トゥルーハート”であった。
「もう、話はいいわ。」
「そうか。」
ベルは直剣を放り投げ、左手を地面に押し付ける。目が赤く光る。突き出した右手に大きな槍が生成される。
神器、ケラウノス。豪華な装飾が付いた、黄金に輝く槍。”仮想”は存在しないものを生み出す。この世界に神器などは存在しない。
イザベラは構える。おそらくこの男には敵わないであろうことを理解してもなお。それが、不象者の代表としての義務なのだ。
晴天から雷が槍に落ちる。ベルは大きく振りかぶって槍を投げる。イザベラは正面から受ける。とてつもない衝撃が加わる。それはイザベラにとってだけではない。ヴァラーハも計り知れない威力を抑えるのに必死だった。プリトヴィーの観客たちも頭を伏せるのに精一杯だった。ベルは殺す気で投げたわけではない。だがそれでもここまでの力を見せつける。神器は神族などという人間が人間に名付けた神とは格が違う、伝説の神の道具なのだから。
槍を抑えきれなかったイザベラは胴体を貫かれ、雷に打たれる。痺れて体が完全に動かない。イザベラは膝をつく。
「…降参よ。」
新しく生成した剣を突き付けるベルの前でイザベラは宣言する。実況は混乱で状況がすぐには読み込めなかったが、様子を見て審判を下す。
「勝負ありいいいいいいいああああああああ!!!!!!レベル4帯優勝者は!!ベル・グレイいいいいいい!!!」
不敗だったイザベラの初の敗北。観客は絶叫とも呼べるほどの沸き上がりを見せる。
「…私、こんなところで何をやっているのかしら。結局何もできなかったじゃない。」
イザベラの独り言を背に、ベルはプリトヴィーを後にする。
案内役に連れられて王の間へと向かう。シャンデリアが吊るされ、レッドカーペットが敷かれていたそこにいたのは他レベル帯の優勝者たちと、豪華な椅子に座ってそれらを輝かしい目で見渡すヴァラーハだった。
「諸君、まずは優勝おめでとう。だがおそらく君たちが欲しいのは賛辞ではないだろう。早速聞こうではないか。君たちの願いを。其方は何が欲しいのだ?」
ヴァラーハはまずレベル1の優勝者から聞いていく。
生活に困らないほどの大金、生涯の身の安全の保障、シャルマ国最高峰の職人が手掛ける武器。”願いを叶える”と言われたときの、現実的な範囲での妥当な回答。最後にヴァラーハはベルに聞く。
「イザベラを破った強者よ、其方は何が欲しい?」
「あんたの国務復帰。」
予想外すぎる回答に、ヴァラーハ含め、その隣に立っていた側近、他の優勝者たち全員が思考停止した。
「え?」
側近はついつい口に出てしまい、すぐに手で押さえる。
「…?????ふっ…ふははははは!!!!」
頭の理解が追いついてきたヴァラーハは高笑いをする。
「はははは!!俺にちゃんと仕事をしろと言うのか!!!そうか!わかった!やろう!!」
本当に言うことを聞いてくれた。ベルは実際にそれを望んではいたが、ここまであっさり認められると逆に困惑してくる。
「よろしいのですか?ヴァラーハ様。」
側近はヴァラーハの了解に驚く。本来側近は神族が仕事をこなすよう監視してサポートするのが義務。シャルマ国単独でも安定しているとは言え、この女は一体何をしているというのだ。
「良い良い。望みを叶えてやるのがこの私の義務なのだ。この男が私の勤務を望むというのであれば喜んで受け入れてやろうではないか。アルカナもそれでよかろう?」
「…はい。」
「みなの望みはすべて聞き入れた!すぐに叶えてやろう!ベルと言ったか?其方の望み通り明日からでもせっせと働いてやろうではないか!!ふはははは!!!」
ヴァラーハは常時こんな感じなのだろうか。謎のテンションに他の優勝者たちは苦笑いしかできない。
「諸君、本日は決死の戦いを見せてくれて感謝する。今日はもう家に帰って休息を…ん?…」
その場にいたヴァラーハ・ナーヤル、アルカナ・クマール、ベル・グレイの3人は異変に気付いた。何かがこちらに高速で向かってくる。黒子のような服を着た人間3人が壁を突き破って突撃してきた。それぞれ短剣、鎌、薙刀。ベルのところまで一直線に走ってくる。ベルは刀を生成すると同時に襲撃者たちを木っ端微塵にする。
「こいつらは何だ?殺して良かったよな?」
「今のはガヴラス国の…アステルか?」
ヴァラーハは心当たりがあるようだ。ガヴラス国は今は亡き管理の神、アテナ・ストラトスが統治していた国である。シャルマ国とガヴラス国は隣接しており、国際的接触は少なくはない。闘技会場方面からも大きな音と悲鳴が聞こえてくる。
「とりあえず状況確認をするぞ。」
ベルの言葉で全員が王の間から出ると、逃げ惑う観客たちと、大量の黒子。
ベルの下へイザベラたちとサキが合流してきた。ベルは問う。
「何が起きてんだ?」
ラヴィは焦った様子で答える。
「闘技が終わったら急に外から侵略して来やがった!」
飛んで来た矢をベルは掴み取る。
「狙ってるのは俺だけのようだな。」
黒子たちは観客を襲う様子はない。全員がベルの方へ敵意を向けている。
「心当たりはないの?」
イザベラが尋ねてきたが、黒子などベルは今まで会ったことなど一度もない。
「ねえよ。でも狙いが俺だけなら好都合だ。客を守る必要がない。」
「まあ、そうね。」
「お前が例の力を得た人間だな。」
黒子の中から1人が前に出る。
「”力を得た”?」
イザベラが反応する。
「あなたやっぱ何かあったじゃないの。」
「ちょっと、今その話は止めてくれ。」
イザベラを遮ってベルは黒子のリーダーらしき人物に注目する。
「誰だお前。」
「せっかくだから名乗っておこうか。俺はティモン・ラリス。」
その言葉にヴァラーハは反応する。
「やはり、アステルだな。」
アステルはガヴラス国出身の暗殺集団である。”均衡”を掲げて世の突出した人物や動物を抹殺している。ティモンは続ける。
「お前、名前は?」
「ベルだが。」
「ベルか、覚えたぞ。邪神アテナから力を得ただろう。その力は危険だ。今ここで抹殺しなければならない。」
「”邪神”?」
「ああ、”邪神”だ。”付与”。あの象徴は一歩間違えれば世界の崩壊を招く。それがもうすでにお前に対して使用されたのだ。」
「なぜ俺に力が与えられたとわかる?」
「僕が知ってるから。」
ティモンの後ろからもう一人少年が顔を出す。この子は黒子ではない。
「僕は真実を見通せるからね。」
「誰だお前。」
「僕はクレオン・ラリス。」
「何だ?そこ2人兄弟か?」
「そう。兄弟。僕は末っ子。」
「…黒子の服は着ないのか?」
「別に着ないといけないわけじゃないよ。ティモン兄さんが好んで着てるだけ。」
「もう話は終わりでいいな?」
ティモンは待つのは嫌いなようだ。
「俺ら全員と戦うのか?」
「本当は闘技後の消耗を狙ってさっきの襲撃でお前を殺すはずだったんだがな。レベル4じゃまともに相手できなかったようだ。こうなったら作戦変更は避けられない。」
「撤退しろよ。作戦失敗したんだから。暗殺の基本だろ。」
「ああ、そうだな。お前の抹殺は別の機会にするとしよう。」
「伏せてください!」
アルカナの声に反応してベルたちはしゃがむ。アルカナは胸の前で拳を強く握ると、手が真っ黒に染まると同時に指の隙間に大量の針が生成される。アルカナは針を前方に飛ばす。レベル5”針”。拡散した針は、アステルの軍団の頭部目掛けて一直線に飛んで行く。ティモンとクレオンは針を掴んだが、それ以外の黒子たちはみな反応できずに力なく倒れる。今アステルが相手にしているのはベル以外に各レベル帯優勝者、レベル4が2人とレベル5が4人の合計10人。挑むのは実に無謀である。
「うわっ、兄さんやばいよこれ!」
「静かにしろ、クレオン。これは想定済みだ。こいつらじゃ時間稼ぎにならないのはわかっている。」
ティモンは右手の二本指を、二本指を作った左手で包む。まさに忍者の構えである。体から黒いオーラが出てくる。ティモンの周囲にどんどんと細胞が生成されていく。生成されたのはさっき死んだはずの黒子たち。アステルは集団である。しかし、その正体は、レベル5のティモンの象徴”分身”により作られた軍隊なのだ。
「よし、ずらかるぞ。」
ティモンとクレオンは黒子たちの後ろに回って走る。アルカナはさっきと同じように針を飛ばすが、黒子たちはすべて避け切った。ヴァラーハは感心する。
「さっきと実力が段違いだな。だが、ここまでのものを生成するとさすがにエネルギーも大きく消耗しているだろう。レベル4以下の者たちではこいつらには勝てない、避難しろ。レベル5の者たちはあの二人を追いたまえ。私とベルでこの黒子どもを片付ける。」
サキたちはすぐに走り出すが、前を黒子が塞ぐ。ヴァラーハは右手で下からすくい上げる。金色の片眼が輝き、地面から巨大な尖った岩石が突き出る。黒子たちを貫くことはできなかったが、態勢が崩れた。アルカナ、サキ、イザベラの三人はそれによりできた間を縫って黒子の壁を超える。黒子たちはそれぞれ異なる武器を生成して三人を妨害しようとするが、ヴァラーハは地面から大きな壁を抉り出し、黒子たちを足止めする。
「兄さん!付いてきてるよ!」
「クソッ。命母の神とその側近以外にレベル5がいるのは想定外だ。」
プリトヴィーから離れ場所は都市部。高速で走り去る二人を三人が追う。身体能力はイザベラが一強であり、徐々に距離は詰まっていく。ティモンは再び印を示す。エネルギー不足で3人ほどしか生成できなかったが、三人を足止めするには可能性があった。
「させませんよ。」
サキは3人の黒子の頭を人差し指でなぞるように追う。人差し指の爪が赤く染まる。なぞられた黒子の頭は音もなくすぱりとずれる。レベル5”斬撃”。
「最終手段だ!クレオン!お前はまだエネルギー残ってるだろ!」
「ええ!!本当にするの!!」
「背に腹は代えられん!」
「もう!!」
クレオンは手に強力な爆弾を生成し、近くに建ってたビルに投げ込む。根元で大爆発を起こしたビルは大きく傾く。
「お前ら、一般人が死ぬのは望んじゃいないだろ!!」
大きな音と人々の悲鳴が響く。
「正気じゃないわね。」
イザベラは傾くビルの反対側にあるビルを駆け上がって壁を跳んで、傾くビルに蹴りを入れる。その衝撃で、傾いていたビルは再び元の位置に戻ろうとする。サキとアルカナはビルから落ちてくる人々を救出する。三人が事を終えるころには二人は姿を消していた。
「逃げられたわね。」
「ひとまずヴァラーハ様のところに戻りましょう。」
三人は市民の安全を確認すると、プリトヴィーに向かって走り出した。
「ヴァラーハ、これ俺いらないだろ。」
「いらないかもな。ふはははは!!」
一方その頃、ヴァラーハたちは特に苦戦は強いられていないようだった。
「この黒子どもはしぶといだけだ。私に負け筋はないぞ。」
レベル5相当の黒子たちを相手にしながらも、ヴァラーハは攻撃の隙を全く与えない。
「もうそろそろ本気でやろうか。ベルは下がりたまえ。」
「了解。」
ヴァラーハは左腕を横に伸ばす。サファイア色の片眼が輝き、辺り一帯が水に沈む。
ヴァラーハの象徴は”大地”と”大海”。踏む場所、いる場所すべてがヴァラーハの射程内である。陸と海。それらは生きる者たちにとって生命線そのもの。それらを操るヴァラーハは、命の母と呼ばれた。
大海に沈んだのはプリトヴィーのみ。水の塊はプリトヴィーを包む直方体の形をとっている。ヴァラーハが左手を握りしめると、水の中でもがいていた黒子たちは一瞬で潰される。操る水は全方位から押し込むことで、数百億気圧もの力を生む。死体や血液は残して、生成された水はすべてヴァラーハの左手に吸収されていく。それを確認すると、ベルは再びヴァラーハの下へ戻って来た。
「その水使いまわしできるのか?」
「もちろんできるぞ。」
「もう対処は終わったようですね。お疲れ様です、ヴァラーハ様、ベル様。」
アルカナたちが追跡から帰って来た。
「申し訳ございません。逃がしてしまいました。」
サキは頭を下げる。
「別にいい。どうせまた俺を狙ってくるだろ。」
辺りを見渡す。人々は避難してプリトヴィーはもぬけの殻。残ったのはベルたちだけだった。
「もう大丈夫そうだな。」
「其方はこれからどうするんだ?」
ヴァラーハはベルに質問する。
「俺は…」
「すいませーーん!!!!」
遠くから1人の女が走ってくる。それはどう見てもベルを詮索している記者だった。足取りは普通の人間と変わらない。ベルのところまで走ってくると、疲れたのか膝に手をついて呼吸を整える。
「あなたですよね!!!!?」
「は?」
「いやだから!怠惰の四神に国務復帰をさせてるの、あなたですよね!!?」
ベルはサキの方を見る。サキは自分でなんとかしろと言わんばかりにそっぽを向く。
「ああああ!!!!あなたはサキ・カグラさんじゃないですか!!この方とお知り合いなんですか!!?何で言ってくれなかったんですか!!!」
レベル5の人間たちによくもまあここまで強気に出ることができるものだ。これが記者魂というやつなのだろうか。
「ヴァラーハ・ナーヤル様は国務復帰をするおつもりなのですか!!?」
「ああ、こいつに言われたからな。ふははは!!」
ヴァラーハはベルを指さす。
「ああああ!!!やっぱり!!!てことは次はヘル・ニールセン様のところを目指すおつもりで!!?」
先にヴァラーハが反応する。
「ヘルか。気を付けたほうがいいぞ。神族最強と名高いからな。」
「まず真正面から力尽くで行くのは推奨しません。和解を狙うべきかと。」
サキはベルに忠告する。
「ヘル様は強さどうこうで話が付く相手ではありませんので。」
「まあ、まずは会ってみないとわからないな。巨大なエネルギーの気配がサイヤード国から感じる。」
「ええええ!!!そんなのわかるんですか!!!?」
「うるさい。」
「そうか。それでは、其方の健闘を祈ろうではないか。」
「お気を付けて!!!!」
コトハは嬉しそうに飛び跳ねながら手を振る。ベルは手だけをあげて歩いて行く。コトハは思い出したようにヴァラーハに向き直す。
「あ!!そうだ!!あの方について教えてもらってもいいですか!?」
「んえ?あー、あの男はだな…」
「馬鹿野郎!!!何勝手に動いてんだ!!挙句の果てには殺されかけてるじゃねえか!!」
ガヴラス国のとある廃墟。男の怒号が響く。
「悪い、兄貴。」
ティモンは下を向いたまま言う。
「危うく死ぬところだったんだぞ!!しかもビルを破壊しただあ!!?俺らの役目は世界の崩壊を防ぐことだぞ!!ただの人殺しのためにこれをやってんじゃねえんだよ!!」
「突然ティモンとクレオンがいなくなったと思ったらこれか。敵に俺らが狙ってることがバレた。暗殺が難しくなったな。レベル5だからって調子に乗りすぎだ。ティモン、クレオン。」
「はい、兄さんたち。」
「命を懸けていることを自覚しろ!!もうお前らは勝手な行動をするな!!以降は俺とメノンだけで作戦を考える!お前らは何もするな!!」
「…わかった。」
「それで?そこまでやったなら例の力を得た奴の名前くらいはわかったんじゃないのか?」
「ああ、わかった。名前はベルだ。」
「ベルか…。ゼノン、これからどうする?」
「今まで以上に慎重に行くぞ。こいつらが殺し切れなかったということはそのベルと言う奴がレベル5なのは確定した。この中も誰も死なない、確実なタイミングを狙う。」
「あいよ。」




