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二人の願いと龍人の血

 そしてその半年後、生贄の儀が近づいてきたという時、アズーロに真剣な顔で稽古のあと話があるから時間が欲しいと言われた。

 その頃にはアズーロの剣の才能が目覚めたのかロッソとの勝敗は三割ほど勝てるようになっていて、その日もロッソに勝っていた。

 ロッソとアズーロに個別に稽古を終えるとツェッドはロッソに先に帰るように言った。


「え、でもアズーロは……」


「俺は大丈夫だって。儀式が近くなって監視が厳しくなっただろ? ロッソは早めに帰れよ」


 監視の目が厳しくなっているのは本当なのかロッソは何度も振り返りながら帰って行った。

 そしてロッソの背中が完全に見えなくなるとツェッドはアズーロを見下ろした。


「話ってなんだ?」


「ツェッドお兄さんは生贄の儀ってどう思う?」


 アズーロは俯きながらツェッドに問いかけた。

 その問いにツェッドはどう答えたものかと考えた。

 敬虔な信者として答えるべきか、ツェッド自身の考えとして述べるべきか。


「敬虔な信者としては必要な儀式だな。だが俺自身としてはくだらない儀式だ」


「!! お兄さんは俺が蛇神様を殺そうと思ってるって言っても馬鹿にしない?」


 アズーロの告白にツェッドはやはりなと思った。

 アズーロが剣術を学び始めた時に見せた焦り、あれは蛇神を殺すのに時間が足りないという焦りだったのだ。

 それを素直に話してくれたということはそれなりに信頼を得られたということか。


「馬鹿にはしないさ。今の実力じゃ無理だとは思うがな」


「生贄の儀まであと半年……それまでに殺せるだけの実力付くかな」


「無理だな」


 ツェッドはきっぱりと切り捨てた。

 事実アズーロの実力じゃ殺すどころか餌になるのが関の山だった。


「でも! 無理でも蛇神様を殺さなきゃいけないんだ! じゃなきゃロッソが死んじゃう!」


「蛇神を殺したら結局ロッソは死ぬんじゃないのか? それにお前も、お前の家族も」


 まだ幼い弟がいるんだろう、とツェッドが指摘するとアズーロは震えたが意志の強い瞳でツェッドを見上げた。


「それでも生贄として死ぬよりマシに決まってる! 蛇神様は死んだら加護がなくなるってだけですぐ死ぬわけじゃない!!」


「なんでそこまで必死になる? 友人とはいえ人生は長い、何れそんな一時もあったなと思うだろうよ」


 ツェッドはアズーロがロッソのために必死に蛇神を殺そうとしている理由がわからず問いかけた。

 その問いにアズーロは覚悟を決めた顔で叫んだ。


「ロッソがいない世界で生きるなんて嫌だ! これから先友人が出来たとしてもツェッドお兄さんの話を聞いて、一緒に稽古したのはロッソだけなんだ! ロッソがいない世界なんて滅びればいい!!」


 たとえ弟や家族がそのせいで死んだとしてもその罪は俺が背負うから! と叫んだアズーロをツェッドは冷静な瞳で見つめていた。

 ロッソはアズーロがいない世界は滅べばいいと言った。

 アズーロはロッソがいない世界は滅びればいいと言った。

 互いに互いの生存と世界を天秤にかけている。

 これはツェッドが求めていた愛の形の一つなのではないかと思った。

 たとえるなら友愛だろうか。

 ツェッドは求めていた物を得られた充実感に高揚しつつもそれを表に出さずに、この友愛を見続けたいと思いアズーロの計画に加担することを決めた。


「お前は俺の鱗をどう思う?」


「え? 外の人はそうなんじゃないの?」


 ツェッドの突然の問いにアズーロは拍子抜けした声で答えた。


「違う。外の人間はお前たちと髪と目の色くらいしか変わらん。これは俺が龍人だという証だ」


「龍人?」


「そうだ。そして龍人の血は猛毒だ。この世界で殺せない生き物はない位には」


 ツェッドは自身の手首に浮かぶ静脈を叩きながら言う。

 アズーロは最初困惑していたがツェッドのこの世界に殺せない生き物はいないという言葉にバッと顔を上げる。


「もしかして……」


「ああ、この血をお前に分けてやってもいい。だが、条件がある」


「何でもやる! 何でもやるよ!」


 顔を輝かせて何でもやるというアズーロにツェッドは条件を告げた。

 告げられた条件にアズーロは目を見開いたがこくりと頷いて条件を飲んだ。

 時は流れ生贄の儀の日、生贄は予定通り蛇神に捧げられた。

 ロッソとアズーロが入れ替わっていることに誰も気づかずに。


「……ここは? 僕は生贄の儀の準備をしていたはずじゃ……」


 儀式が行われる直前、青い髪と青い瞳をしたロッソがツェッドの足元で目を覚ます。

 ツェッドは生贄の儀の朝、村人達が目を覚ましていない時刻に認識疎外の魔法を使ってアズーロと共にロッソの屋敷に忍び込んだ。

 認識疎外の魔法とは、姿形が見えていてもまるで何もいないように周りから見られる魔法だ。

 それによってツェッド達はロッソの部屋に潜入することができた。

そしてロッソの意識を奪いアズーロの髪と瞳を赤く染め上げた。

 その際にロッソにかかっている魔法を解いた。

 ロッソの髪と瞳が途端に青くなる。


「ツェッドお兄さん今のって……どうやったの?」


 初めて魔法を見たアズーロは興奮気味にツェッドに尋ねた。


「これも龍人だからできることだ」


 ツェッドがそう答えるとアズーロは龍人ってすごいんだね、と目を輝かせた。

 そんなアズーロにツェッドの血が入っている瓶を持たせた後ツェッドはロッソを抱えて屋敷を出た。


「ツェッドお兄さん、ロッソのことをお願いね」


「ああ」


 屋敷を出る際に屋敷に残るアズーロとそんな会話を交わした。

今回は短めです。

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