終章~運命の番~
ツェッドが意識を取り戻すと夜になっていた。
どうやら自分は長い時間あの世界に居たようだと思いながら、身体を起こした。
「ツェッド! 大丈夫? 貴方七時間も旅立っていたのよ! って泣いているの?」
「ツェッドさん、求めているものは手に入りましたか?」
ツェッドは外套を被った女性の言葉で自分が泣いていることを悟った。
そしてカイトの言葉にツェッドは思ったことを答える。
「愛とは時に憎しみの中に生まれることもあり、理解できないものもあるが、美しいものだ。俺も誰かに愛されたいと思った」
それはツェッドの心からの思いだった。
ツェッドはこれまでいろんな愛を見てきた。
友愛、主従愛、慈愛、親子愛、恋愛、愛憎、そしてシアンとマジェンタは……純愛。
七つの愛を見てツェッドは愛というどういうものなのか理解した。
そして自分には縁が無いものだと言うことも。
なぜなら
「今まで好き勝手やって来て、なおかつ翼も目も腕も無いこんな醜い俺じゃ、誰も……愛してくれないだろうがな」
「……私がいるわ」
ツェッドが自嘲した時女性の声が割って入った。
視線をやるとそこには外套を被り赤いワンピースを身に纏った女性が一人。
女性は――ラドは――外套を脱ぎ捨てると、番の匂い消しの効果を自らの意志で消した。
番の匂い消しが好まれているのはこの特性にある。
最初は嫌な番でも見ていれば惹かれあうことがある。
番に惹かれたその時に自分の意志で匂い消しの効果を消せるのだ。
ラドは白銀の髪を揺らしながらツェッドに近づき、抱きしめた。
途端にツェッドの鼻腔にずっと恋焦がれていた花のような匂いが広がる。
「おま、えは……」
「私はラド。貴方の運命の番よ」
ツェッドはラドの声に聞き覚えがあった。
ツェッドがアンナリ・パッラで愛を見てきた際必ず何を見ていたのか問いかけてくる女性の声だ。
自分がこんな近くにいた番の匂いに気付かないとは思えない。
と言うことはこの女性、ラドは番の匂い消しを使用していたのだろう。
では何故今になって番の匂い消しの効果を消したのか。
それよりも
「俺で……いいのか……」
「貴方が不安になるのもわかる。貴方は私のことを何も知らないものね。でも私はいろんなものと引き換えに愛を知った、貴方が良い」
途端ツェッドの中のぽっかり空いた心の穴が満たされたような感覚がした。
ラドと言う女性のことはまだよく知らない。
けれど彼女の呼吸が、匂いが、心音が今までツェッドの名声や顔に惹かれて好きだとか愛しているだとか言ってきた女性達とは違うのを証明している。
何よりラドはツェッドが変わるのを間近で見てきてくれていた。
その上で見放さないで、自分を選んでくれた。
その事実がツェッドを満たした。
「俺は……ツェッド。不甲斐ない男だが、よろしく頼む」
ツェッドがラドを抱きしめ返した時、ふとラドの力が抜けた。
終章開幕です。ツェッドが最終的に下した決断とは……。




