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消えた翼、芽生えた感情

二話連続更新です。

 ツェッドが意識を取り戻すと目の前にカイトがいた。


「店主、結果的にあの世界は滅ぶのか」


 ツェッドはヴィオラが侍女に殺されたことにより怒った魔王の手で世界が滅ぶのだろうと思って阻止したわけだが、阻止した結果世界の記録が書き換わるのか気になった。

 ツェッドの質問にカイトははい、と答えた。


「貴方が片翼を犠牲にして助けたヴィオラは何かしらの要因で死に、あの世界は魔王によって滅ぼされます」


 残念ですか? と聞かれツェッドは何とも言えない気持ちになった。

 ヴィオラの幼馴染のツェッドとしては残念に思う。

 だが現実のツェッドはヴィオラとは無関係だ。

 結局、ツェッドはお前には関係ないと言って店を立ち去ろうとした。

 そこに駆け寄る女性が一人。


「ああでも、貴方がしたことは無駄ではありませんよ」


 あの世界に住んでいる住民の余命を伸ばしましたから、というカイトにツェッドは少し報われた気持ちになった。

 外套を被り青色のワンピースを纏った女性はツェッドにこう問いかけた。


「ねぇ、貴方は何を見てきたの?」


「……愛を見てきた」


 ツェッドは俺には理解できないものだったが、と内心付け加えながらそう答えると今度こそ店を出た。

 ツェッドにはヴィオラの慈愛が理解できない。

 殺そうとした奴を救おうとする考えも理解できない。

 けれど、この世界に生きる命の一つ一つを尊いと思っていると言うヴィオラの姿は正しく慈愛の聖女そのものだった。

 ツェッドは愛の中にも理解できないものがあるのだなと知った。

 しかしそれでいい。

 ツェッドは理解できないことも知らなかったのだから。

 ツェッドは店の近くの路地裏にいる弱った犬を見てあの交雑種の犬とヴィオラを思い出し、治療魔法をかけるとその場から立ち去った。

 その姿を見ている二つの影があるとも知らずに。

 ふらりとツェッドの身体が傾く。

 それは恐らく片翼を失ったことによる重心の狂いだろう。

 ツェッドは早く慣れないといけないなと思いながら、片翼を失った背中が軽くなったのを実感していた。

 ツェッドは再び騎士団長と王様のことを考えながら、ヴィオラのことを忘れるように依頼を受注した。

 ツェッドが再び店に行くのはそれから二か月後のことだった。

第三章閉幕です。第四章はもっと身近にある愛に触れる話……。

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