永世名誉騎士団長と、ツェッドの後
――一か月後
南部に向かった騎士団が返ってきた。
ツェッドはその凱旋を見ながら先頭にヴェルデがいないことに気づいた。
列の後方に死亡者の棺が運ばれてくる。
そのうちの一つ、先頭のものがやたらと豪勢なのが気にかかった。
凱旋を終えてヴェルデではなく副団長が謁見の間に入ってきた。
ツェッドは陛下の護衛として謁見の間に居たので副団長の顔が暗いのにすぐ気づいた。
「ご苦労だった。ところでヴェルデは?」
「団長は……スタンピードの主と戦った後アレイスター家の刺客により命を落としました……!」
「なんだって……!?」
ジャイロは副団長の報告に目を見開いた。
ツェッドはヴェルデが死んだ……あそこまでしといて……? と思いながら事の様子を見守る。
引き抜いた爪がズキリと痛みを発した気がする。
副団長はジャイロに許可を得ると一つの棺を謁見の間に運んだ。
棺を開けると魔法で綺麗な状態に保たれたままのヴェルデの死体が現れる。
「ヴェルデ……っ、ご苦労だった……」
ジャイロはヴェルデに近寄るとヴェルデの手を握り涙を流した。
ツェッドにはそのジャイロの涙がとても尊いものに見えた。
数日後。騎士団長ヴェルデの葬儀は国を挙げて行われた。
葬儀が終わった後ジャイロはヴェルデを永世名誉騎士団長に任命し、ジャイロの治世では騎士団長を任命しないことを発表した。
アレイスター家は騎士団長暗殺の容疑でお家断絶となった。
「よかったのですか。騎士団長を任命しないって発表して」
「いいんだよ。僕にとって騎士団長はヴェルデ・アレイスターだけなのだから」
発表後、ツェッドが王宮の裏庭でジャイロに問いかけると、ジャイロは愛おしそうな目をしながら空席となった騎士団長の席を見た。
そんなジャイロの答えにこれもまた主従愛というやつかとツェッドが思っているとグンッと意識が引っ張られる感覚がツェッドを襲う。
よく見ればツェッドの身体が透け始めていた。
どうやら今回のアンナリ・パッラはここまでらしい。
ツェッドは直前に受けた依頼がスタンピードだったことを思い出した。
そこでも騎士団長が死んでいた。
もしかしするとジャイロとヴェルデみたいな関係性だったのかもしれない。
自分は騎士団長を庇おうと思えば庇えたのに庇わなかったことを少し後悔した。
何故ならツェッドは騎士団長を見捨てたからだ。
実力不足の癖にスタンピードの対処に出しゃばってくるからだと。
ジャイロからはもうツェッドの姿は見えていないのかそちらは幸せかい? ヴェルデと愛おしそうに呼び掛けているジャイロの姿が見えた。
ツェッドが目を覚ますとそこはカイトの店だった。
「今回の旅はいかがでしたか?」
「……悪くなかった」
カイトの問いかけにツェッドはそう答えると席から立ち上がった。
「……礼を言う」
「おや」
ツェッドが小さく礼を言うとカイトは驚いたように目を見張った。
そんなカイトの様子に居心地の悪さを感じながら店を立ち去ろうとした。
そのツェッドに近寄る影が一つ。
外套を被り藍色のワンピースを纏った女性がツェッドに駆け寄った。
「ねぇ貴方は何を見てきたの?」
「愛を見てきた」
ツェッドは近づいてきた女性にそう答えると店から出ていった。
その表情が柔らかく見えて女性は心の底から驚いた。
「ほら、影響を与えると言ったでしょう?」
「……そうね……」
女性とカイトがそんな会話をしていることなど知らずにツェッドは二週間後に店を尋ねるのだった。
第二章閉幕です。第三章はツェッドが理解できない愛に触れる話……。




