第七十八話 不幸とは
偶然出会った男の子の話が終わる頃には、いつの間にかディアムが居た。どうやら、バルディスが言っていた調査を終えて帰ってきたらしかった。
「欠片の持ち主か……」
「バル? 不幸の欠片の持ち主とやらが現れたのですか?」
「説明、求める」
話し終えたとはいっても、ラーミアやディアムには内容が伝わらない。我輩、そういえば前にやったように飼い主の姿へと変化すれば良かったのだったと思い至るが、過ぎてしまったことは仕方ない。
バルディスが我輩の話を伝えるのをぼんやりと眺めながら、我輩、次はちゃんと姿を変えようと決意する。
「――――と、いうわけだ」
「なるほど、不幸の欠片を持った子供ですか……どんな不幸かは分かりませんが……ディアムはどう思いますか?」
「レジスタンス、もしくは、ミルテナ帝国、どちらかに、属している可能性、高い」
「やっぱりそうなるよな」
「にゃ? (どういうことなのだ?)」
ぼんやりと聞いていると、なぜかそんな話になっていて、我輩、首をかしげる。
「あー、そうだな。まず、前回の欠片の持ち主のことを考えると、不幸の欠片の不幸レベルというか、なんというか……とにかく、そんなものは、国単位での不幸なんじゃないかと思えるわけだ」
「にゃ(なるほど)」
言われてみれば、確かにあのレディ、サリアーシャは、自らの命が危うかったのはもちろんのこと、一歩間違えれば国が滅ぶきっかけを作っていたであろう人物だ。もし、サリアーシャが父親を殺していたら……いや、殺さずとも、大怪我を負わせていたら、どうにか保っていた国は立ち行かなくなっていた可能性が高い。
「にゃあにゃにゃー(つまりは、元サナフ教国の大きな問題の中心地に、あの男の子が居ると考えると、その二択となる、というわけか)」
第三の勢力があるならまだしも、今の我輩達が確認できている勢力は、ミルテナ帝国とレジスタンスという二つのみ。
「あぁ、そして、どちらかといえば、レジスタンスである可能性が高い」
「にゃにゃー? (今現在、不利な勢力であるからか?)」
「そうだな。そういうことになる。ただ、ミルテナ帝国の勢力という可能性も捨てきれないから、一概にも言えないが」
『もし、あの男の子がミルテナ帝国の勢力に属していて、それなりの身分の者だったりした場合、レジスタンスに殺されることで、むしろミルテナ帝国による蹂躙がはじまるなんてことが起こるかもしれない』という可能性を話すバルディスに、我輩、なるほどと思う。我輩だけでは、そのような考えなどできなかったであろう。
「バル、そろそろ、報告」
「ん? あぁ、すまない。頼む」
あの男の子のことを調べなければならないという事実に、我輩、場所をしっかり覚えたのは間違いではなかったと安堵し、話し始めたディアムへと注目するのだった。




