第七十七話 砂漠に戻って
我輩が、ようやく気配を遮断したままだったことに気づいた頃には、空が白み始めていた。しかし、気配を戻せば、すぐにバルディスとラーミアが駆け付けてくれ我輩、本当に、本当に、ホッとしたのだった。そして現在、我輩達は……ルーグ砂漠に戻っていたのだ。
「にゃあにゃ? (バルディス、なぜ砂漠に戻る必要があるのだ?)」
すぐ目の前に元サナフ教国がある。宿泊施設があり、食事処もある。それにも拘わらず、なぜ過酷な環境である砂漠に戻るのだろうか。
「タロは、ミルテナ帝国の騎士がうようよ居る中で、ゆっくり休めると思うか?」
疑問に疑問で返された我輩は、一瞬、答えに詰まりながら、よくよく考えてみる。
……うむ、とっても危険なのだ。
我輩達が、ただの小市民と言うには怪しすぎる団体であることくらい、百も承知だ。それは、バルディス達の角を隠し、魔族であることを隠すために仕方のないことだとしても、ずっとターバン姿というわけにはいかない。
それに、デイブがちょくちょく言っていたのだが、バルディス達は揃いも揃って『美形』らしい。目立つことこの上ない顔の造形をしている以上、穏やかな日々を、ミルテナ帝国の騎士達かうろついている元サナフ教国で送るのは不可能と言えた。
「それにな。元々、サナフという国は、亜人差別が激しいところだ。万が一、俺達が魔族だとバレたらどうなるか分からない」
「にゃ! (それは大変なのだ!)」
我輩、魔族が差別される存在だと知らなかったため、驚いてしまう。何せ、我輩の知る魔族はバルディス達と仮面の魔族のみ。誰もがそんな差別などものともしない胆力を持ち合わせているようにしか見えなかったので、まさかそんなバルディス達を差別できる者が居るなど思いもしなかったのだ。
「……何か、変な誤解をしてないか?」
にゃむにゃむと考え込んで納得していると、ふいに、バルディスからそんな言葉をかけられる。
「にゃ? にゃあ。にゃにゃ(む? そのようなことはないのだ。ただ、バルディス達を差別できる者はすごいと思っただけなのだ)」
そう言うと、バルディスはブツブツと『差別という言葉の認識が違うのか? いや、魔族を俺達くらいしか知らないせいでもあるか? ……どうしたものか……』なんて言っていたが、しまいには『まぁいいか』と言っていた。
うむ、何だったのだ?
とにもかくにも、我輩、国の現状が分かってすっきりしたのだった。そして、我輩は大事な用件を思い出す。そう、あの欠片の持ち主のことだ。
我輩、ちょうど話が一段落したと思い、その話を持ち出すことにしたのだった。




