追 章 2- 6/11 高校一年生・初夏
「思い出したみたいだな?
そうだ、大人が許可した場所以外でも、しかも他人のパソコンも使ってはいけないはずだ」
利沙は、言葉を失った。
これが意味するのは、もう一つしかない。
「これで、分かったな? これから(警察)署で、詳しく聞かせてもらおう」
「ちょっと、……待って」
そう言うと、東野の持つ腕を離そうしたが、無駄だった。
「痛い。……ちょっと、待って。だって、やりたくてやったんじゃない。そんな……違うって」
「どうやら、はっきりと分かったみたいだな? 保護観察中の再犯。これがどういう意味か!」
「……言ってるでしょう? 私からやったんじゃない。お願い、聞いて!」
「そうか? なら、彼等からも詳しく聞こうか?」
「いや、そうじゃなくて、彼らは何も知らない。私が勝手に受けたし」
「だったら、やっぱりお前が悪いんだろう?」
「だから、……違うって」
そんなやり取りを聞いていて、三枝は、
「あ、あの、……俺達が、その、……」
「三枝君は悪くないよ。私が、もっと気をつけてれば良かったんだ。
……こんなことになるなら、中東のサーバーでも使えば良かった。わざわざ自分のを使ったのに」
「何を言ってる! これ以上……」
「でも、だったら、私を見つけられなったのに……」
「お前な! まだ懲りてないのか。
お前は、監視下でハッキングしたんだぞ。しかも他人のパソコンで!
この二台にはその証拠が残ってるわけだろう? これを調べて……」
「私が、証拠を残すと思う? 他人のパソコンに私が使った形跡を残すとでも?」
「……そうか、別か。それなら、その証拠を出してもらおうか」
市塙が、利沙に詰め寄った。
「利沙は、とっさに左手をポケットに入れた。
その手を市塙は掴みあげた。
「油断したな? これか?」
利沙の手に握られたままのメモリーを、無理矢理取り上げた。
「くっ、……見られるものなら見ればいい」
「どうせ、見られないと思ってるだろうが、もうお前の手は解析済みだ。
プロをなめるんじゃない」
「どうだか? やれるもんなら、やれば?」
「利沙。お前、これにどんな仕掛けをした? そこまでの自信はなんだ?」
「しかけ、さあ? でも、頑張れば何とかなるかもね?」
この二人の掛け合いは、東野の一言で終わった。
「すべては、署で」
その言葉で焦ったのは、利沙だった。
「ちょっと待って。……すぐに帰れるの? 今日は無理でも、また……」
「そう思うか? 何したか、考えてみろ。俺達には決められない」
そう言ったかと思うと、利沙はそのまま車に乗せられた。
車が去る時に市塙は、三枝と井東に、
「今日の事は忘れるなよ。何かしてもすぐばれる。
悪い事はするんじゃない。ただ、学校に報告させてもらうから」
それだけ告げた。
二人は、それを聞いて、自分達がどれほどの事に関わったか、理解した。
「「やばいよ。……」」




