追 章 2- 5/11 高校一年生・初夏
「いいよ。俺達同じ学校なんだけど、友延はパソコンの技術はすごいから、色々訊いてた。
今日も、同じように訊いてただけだ」
「今日は何を訊いてたんだ?」
「今日は、ハッキングから守る方法だよ」
「ほう、で? どんな具合に?」
市塙は、ちらっとだけ利沙の方を見た。
傍には東野がしっかり張りついている。
「ここにある二台のパソコンで、一方から一方へハッキング仕掛けて、
それをいかに回避させるか。だよ」
「じゃあ、実際にここでしたんだね?」
「ああ、そうだ!」
「それだけで十分だ。ありがとう」
市塙は、三枝から利沙に向き直った。
「そうか、ここからね?」
「別に問題ないよ。ただのシュミレーションだからね。依頼を果たしただけだし」
「問題ないと思っているなら、初めから話せばいいだろう?」
「そちらさんは、なんでも疑ってくるからね。簡単には、何も話す気はない」
市塙に対して、今日初めて気の抜けた感じで応じた。
「そうだったのか。それと、もう一つ質問がある」
今度は三枝と井東に向かって、
「そのパソコンは、屋外でもインターネットにはつなげられるのか?」
「ああ、できるよ。インターネット回線さえあれば問題なく。
こいつには無線用が搭載されてるから」
「そう、ありがとう」
その会話を聞いていた利沙の表情が、一瞬曇った。
それを見逃さなかったのは二人の刑事だ。
「そうらしい。で? まだ心当たりがないと?」
「……そういうことか」
利沙は、控えめに、つぶやいた。
それを聞いていた三枝達は、いまだに意味が分からずにいた。
「何、何が。どういうこと?」
そこに、市塙が切り出した。
「ここには、公共の回線は存在しない。
インターネットをつなぐには、個人で準備しなければ、ここでネットは出来ないんだ。
なのに、利沙は接続出来た。何の問題もなくだ」
「それが? そんなの、友延が持ってたんだろ? それ用のを」
「…………」
利沙は、何も話さなかった。
それに対して、市塙が続けて、
「私達が、なぜここに来たのか分かったみたいだな? この後、詳しく話を聞こうか」
そう言うと、東野は利沙の右腕を掴んだ。
「ちょっと待てよ。何があったのかちゃんと説明してくれって、何があったんだよ?」
井東は、三人を止めに入った。
「それは、君達に直接関係ない。必要なら、また話を聞かせてもらおう」
全く取り合わないので、三枝は、利沙に、
「友延! 一体何があったんだ? 教えてくれよ。
もしかして、俺達が悪かったのか?」
二人には、何か分からない不安が襲っていた。
それが伝わったのか、利沙が話し出した。
「二人は何を知ってるか知らないけど、ここでネットは出来ない。
そのパソコンではね。
でも、私には出来た。
なんでだと思う?
……それはね、ここ、だからだよ」
「どうして? ここでは無理なんだろ?」
市塙が後を継いだ。
「君達だって、家で無線回線を使うだろう?
そして、この周りの家でもそうしてる所があった。
これだけ家に囲まれた公園なら、家から漏れ出る無線用の回線を捕まえられる。
許可をもらって使うならいいが、それが、もし……」
「でも、そんなの、普通わからないだろう? どこのを使ったとか、どうして、ここ?」
「それはね、私が、自分のサーバーを使ったから」
ますます意味が分からくなっていた。
途方に暮れる二人に、観念したのか利沙が話し出した。
「私は、ここから、どこからか漏れ出る無線回線を拾い出して、
無断でその回線を使ってネットにつないだ。
そのまま、私が作ったサーバーを経由して、二台のパソコンをつないだ。
それを今使ってた。
しかも、私のサーバーは、二十四時間体制でモニタリング(監視)されてるから、
サーバーにつないだここの回線を割り出した。
その後、その無線回線の所有者に、そこの住人ではない誰かが使用してると確認して、
発信元のこの公園まで使用者を確認しに来た。
それが私。ってことでしょ?」
利沙は、市塙に顔を向けた。
「そうだな。まあ、当たってる。さすがだよ。
では、それをこの世界でなんていうか知ってるか? 無断で人の物を使うのを、」
「さあね?
でも、……気がつかなかった。何の抵抗もなく、自然につないでた、……そうか」
「まあいいだろう。でも、犯したのはそれだけじゃないのを、自覚してるか?」
利沙には、よく分からなかった。
「覚えてないのか?
裁判所で言われた、家に帰るための条件を。少なくとも二つだ」
「……!」
利沙は、はっ、とした。市塙も顔を見た。




