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追 章  2-  7/11 高校一年生・初夏 

 利沙の父親が登場します。


         4


 翌日、学校では、様々な形で噂がされていた。


 一つには、全くのデマもあったが、それ以外はどこかに事実が含まれていた。

 ただ一つ、全てに共通していたのは、利沙が関わっているという内容だった。


 どこから漏れたのか? 


 それは簡単だ。

 三枝と井東に利沙に作業させるように言いつけた、先輩の方々だった。


 それというもの、あの時結局パソコンは一時押収されていた。

 その腹いせでもあった。


 翌日には返されたものの、どこか納得がいかなかった。

 その場にいなかったのに、事情を聴かれたことも関係している。


「俺達は、何も強制なんてしてないよ」


 そう言っただけだった。

 しかし、後輩達には、させなかったら、ひどい目にでも合わされるのではないか、

 という恐怖から、利沙に対して強く出たのだが、本人達が認めるはずもなかった。


 しかし、これについて、教師達からひどく説教されたため、

 しばらくは大人しくしておくしかないのも、納得できるものではなかった。


 上級生二人と三枝、井東に関しては、登校は許されたが、しばらくの間、部活動を禁止された。

 それくらいで、特に何もなかった。


 では、利沙は? 

 


 公園から車で警察署に連行された後、事情を聞かれた。


 そこで、利沙が事実を認めたので、その事実を確認するため、

 押収されたパソコンとメモリーを解析された。


 パソコンについては、それ程の時間は要さなかったにもかかわらず、

 メモリーには、なかなか手こずった。


 が、なんとか解析すると、見事な内容を見つけた。


「へえ、出来たんだ。まあ、大した鍵はかけてなかったから。でも、……さすがですね」


「何を言うか! 大人を馬鹿にするんじゃない。

 自分の立場を分かっているのか? いい加減にしろ!」


「……それで、私はどうなるの? あれ(メモリー)見たなら、それと交換。で、どお?」

「交換条件か?」


「まあ、そんなとこ。

 でも、もう、絶対しない。これからは手を出さないから。帰してほしい。

 これ以上、家族に迷惑かけたくないの。


 それに、今回は自分で始めたんじゃない。

 それに、もうこんな思いしたくないから、絶対手は出さないから」


「判断は、私達がするものじゃない。しっかりと、自分のしたことを認めるんだな?」


「そんな……。本当にしたくてしたんじゃないよ。

 気がついたら、こんなことになってたの」


 利沙は、明らかに処分を免れようとしていた。

 そのために、さっきから同じことを主張していた。


「自分からは、何もしていない。やらされただけだ」


 と。


 数日後、判断が下された。

 今回に限り、事情が特殊なので、いったん帰宅していいと。


 そして、それが学校に知らされ、ちょうどその時、職員室にいた三枝と井東の耳に入って来た。

 いつ、という内容まで。


 そして、利沙が釈放されるその日、三枝と井東は利沙のいる警察署に来ていた。

 気になって仕方なかったのと、何より、早く謝りたかったからだ。


 警察署に来ていたのは、二人だけではなかった。


 利沙の父親である、駿也(しゅんや)も来ていた。

 利沙を引き取るために。


 しかし、警察署に入ると、三枝と井東には、大声で警察官に訴えている駿也がいた。


「……もう結構です! 利沙はそちらで預かって下さい。

 もう私達に、利沙を見張れません。


 あの子は、……利沙は、私達家族を騙してばかりいる。

 今まで散々付き合ってきた。


 でも、もう限界です。

 そちらは、随分前から、あの子の技術を買ってくれてるんでしょう? 

 だったら、もう……、そちらでお願いします」


 かなり興奮しながら、頭を下げて訴えていた。


 スーツを着こなし、明らかに紳士に見えるのに、かなり取り乱している。


 それだけ本気。と、いうことだろう。


 三枝と井東は、改めて、とんでもない事をしてしまったと思い知った。

 いたたまれなくなり、気がつくと、警察署を飛び出していた。


 その様子を見ていたのは、三枝達だけではなかった。


 利沙だ。


 利沙も、迎えが来るというので、部屋を移動していた。

 そこに、駿也の必死の声が聞こえてきた。


 自分を拒絶する、その声を。


 それを聞いた利沙は、表情がなかった。

 ただ、涙が頬を伝った。


「分かったか? お前は、自分が考える以上に、いろんな人に迷惑をかけている。

 特にお父さんや家族にだ。


 それを自覚するには……、いい時だったかもしれないな? 

 でも、もう最後だ。


 これ以上はない。いいな。今だけだ。二度と言い訳は聞かない。

 もう、これが最後だ。


 ……ただ、このままじゃ、今回でさえ帰れるかどうか?」


 そう言うと、市塙は部屋を出た。


「お父さん。利沙さんは、十分反省しています。だから、今回はお連れになって下さい。

 大丈夫、もうこんなことはないですよ」


「そんなこと言って、他人事だとお思いでしょう? 

 もう限界だったんです。もう、私達に、あの子の面倒は見られない。


 私達自身が、あの子を、利沙を信じられないんです。

 自分の娘です。信じたい。


 でも、信じられないんです。信じたいのに……! 

 娘なのに。


 ……どうしたらいいんですか? 私達が信じようとしても、こうして、また裏切られる。

 どうせまた、同じことの繰り返しだ。もういい、もういいんです!」


 体裁も何も考えず、ただひたすら、あの父が、自分のために頭を下げる。

 涙を流している。


 その光景は、利沙には衝撃だった。

 その事実に、利沙の流す涙は止まらなかった。


「お父さん。頭を上げて。さあ……、ほら、娘さんも見ていますよ。

 もう、十分反省しています。


 裏切られても、また信じてやって下さい。


 娘さんには、お父さんやお母さんが必要なんですよ。

 大丈夫、お父さんの気持ちは、十分、伝わっていますから」


「利沙が?」

「ええ、そこに」


 利沙の姿を見つけると、足早に近づいて行った。


「お父さん、ごめ……」

 言い終わらないうちに、駿也の平手が、利沙の頬に勢いよく舞った。


「……いい加減にしてくれ。もう、お前と暮らせる自信がない。もう、……」

 言葉にならない俊也に、利沙は、


「ごめんなさい。でも、私、したくてしたんじゃない。させられたの。本当に……」


「もう聞きたくない。言い訳はもういい。こんな繰り返しは、もう、たくさんだ!」


 俊也は、もう、利沙の方を見ていなかった。

 そのまま立ち去ろうとする駿也を、慌てて警官が引き留めた。


「お父さん! 待って下さい。もう少し、話しましょう。一緒に!」


 その後、何とか説得して、利沙は家に帰る事が出来た。

 ただ、その後一度も娘の方を見なかった。


 その様子を見ていた警察官は、


「これから、厳重に監視しろ! あの状態なら、近いうちに何かしでかすかもしれない」

 そう指示していた。


 利沙が、近いうちに何か起こすのではないかと、そう思わせる光景だった。


 初めて家族がどんな関係か、うっすらと見えてきた感じでしょうか。

 ここで、一旦家族からは離れます。

 次回からは、また、学校内になります。

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