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花が咲く 第一部 ~その時見た夢~   作者: 三布
第三章  過去との遭遇
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第三章  16

              7


 三月に入って桜の蕾が膨らんで、もうすぐ花が咲きそうな頃。

 卒業の日が近づいていた。高校を卒業した後は、みんな三光園も卒業していく。


 そんな卒業生達に、ささやかではあるが、卒業おめでとう会と送別会を催す事が、ここの恒例となっていた。


 残る子ども達全員で劇をする。

 と、いうのが決まりごとで、今まで受け継がれていた。

 それを三月二十日に控え、みんな練習に励んでいた。


「ほら、そこちゃんとしろよ」

「お前、出番忘れてるだろう」

「あ、ごめんごめん。そうだった」

「しっかりしろよ」


 などなど、色々やり取りが交わされていた。


 そんなある日、三光園に男女の二人組がやってきた。


 三光園に来る男女の二人組みといえば、大体、里親候補が多いのだが、

 見た感じそういう雰囲気は見られなかった。


 職員室に入っていった後、しばらくは気にしていた子ども達も、そのうち気にしなくなった。


「今度は、誰が行くのかな?」

 そんな風に何人かが気にする程度だった。


 なのに、職員室に呼ばれたのは、みんなの予想を覆す子だった。


 なんと、利沙が呼ばれて入っていった。

 それを見て子ども達は、一斉に職員室のドアの前に集まった。


「なんで、利沙が?」


 そんな声がいくつも交わされ、それに気づいて職員は、

「ここはいいから、練習してなさい」

「でも、利沙って。どうするの?」

「里子に行くわけじゃじゃないから、少し話したいって事なの。さあ、ここはいいから」

 なんとなく、煙に巻かれたように、子ども達は劇の練習に戻っていった。


 それからしばらくして、利沙は、女の人と一緒に職員室から出てきた。

 利沙は、そのまま自分の部屋に入って行った。


 子ども達は、

「美菜、ちょっと見て来いよ。お前、同じ部屋だし、追い出されたりしないだろう?」

「何しに行くのよ。今、行ったら、ばればれでしょう?」

「いいから、何か取りに来たって事にして、行って来いよ」


 美菜はしぶしぶ部屋の前まで行くと、その後ろを他の子がじっと見つめていた。

 美菜は部屋の前で、一度立ち止まると、後ろを振り返った。


 すると、みんなして、

「さっさと行け」

 と、身振り手振りで指示した。


 仕方なく美菜は大きく、しかもゆっくり深呼吸してから、ノックして入っていった。

 それをみんなは息を殺して見守っていた。


 そのうち、美菜がタオル一枚持って部屋から出てくると、みんなが駆け寄ってきた。


「どうだった? ……なんだよ、このタオル。それよりどうだった、何て言ってた?」

「何か持って来いって言ったの誰よ?」

 美菜は不満そうに言うと、


「そんな事より、どうだった。何か言ってたか?」

「…………」

 美菜が何も話さずにいると、


「どうしたんだよ。何があったんだ?」

「それが、何も言ってなかった。それに、利沙、どこか行くのかも?」


 美菜が自信なさそうに言うと、

「なんで、そう思うんだよ?」


「だって、カバンに荷物詰めてたの。まるでどっかに行くみたいに」

 その言葉に、みんなは一瞬何も言えなかった。


 それでも、

「でも、里子には行かないんだろ? 先生言ってたし」

 答えの出ない問いかけに、誰も何も言えなかった。


「すぐ、帰って来るのかな? ほら、利沙ってパソコンしてるじゃないか、それかもよ。

 いい腕してるから、引き抜きみたいな?」


「でも、利沙は楽しそうじゃなかった。全然笑ってなかったし」

 美菜が、言葉に詰まった。


 いつも利沙は笑ってた。

 よっぽどの事があっても、いつも利沙は笑ってた。


 その利沙が笑ってなかった? 

 それがみんなには、不思議な、いや、不気味だった。


「何があったんだろう?」


 そう言ってると、利沙が部屋から出てきた。


 いつもは手にしていない、杖を持って。

 部屋の中では、あまり使うのなかった杖を持っているという事は、出かけるという事だ。


 しかも、付き添いの女性が、利沙のカバンを持っていた。


 利沙は部屋から出てくると、女性と何か話を交わしてから、子ども達が自分の方を見ている気配に気づいた。


 子ども達が何か話そうとした時、利沙がニコッと微笑んだ。

 それにつられて、子ども達も微笑んだ。


 それを見た利沙は、そのままトイレの方に歩いて行った。

 その後を追いかけてトイレを見ると、入り口に荷物を持った女性が一人いるだけだった。

 それを見ると、子ども達は戻らざるを得なかった。なんとなく、近づけなかった。


 でも、時間がいくら経過しても、利沙はトイレから出てこなかった。


 男性が、女性を探してトイレまで来ると、女性はトイレ中の利沙に声を掛けた。

 しかし、返事がなくトイレの中を確認すると、誰もいなかった。


 それどころか、利沙の使ったトイレには、外部に通じた窓があり、その窓が開いていた。


 それを確認した男性は、どこかに連絡を取った。


 その声があまりにも大きく子どもにも聞き取れた。


「友延利沙が逃走した。大至急応援を頼む」


 そう言うと、女性に怒鳴っている。

 女性はひたすら謝っていた。


 そんな様子を見ると、子ども達は不安になった。


「何が、起こってるんだ?」


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