* 再 来 其の二 * 2
「今朝は普通な感じで旅館の人が出て、取り敢えず的な会話をして、なんか話、通じずみたいな感じでイライラするから切っちゃったんだけど。それで、さっきの電話で、こっちに来るって話に」
「旅館は……あったんですね」
何だか、変な聞き方をしている自分がいたことは自覚していたけれど、旅館も存在しなかったのではないかと脳裏を横切ったのは否定できない。
「あったみたいね」
私の問い掛けに苦笑しながら言った鈴木先輩だった。
「みたいね」という言葉に、鈴木先輩も私と同じ思いを持っていたよう。
母がいれた、もう冷めかけたお茶を口にしていた私たちがいた。
冷静を装ってくれているのか、鈴木先輩の真意は判らなかったけれど、やけに冷静な話し方や対応をしてくれていた。
その淡々とした言葉や口調に、私は少しの安心と共に、何か言い知れない恐怖を覚えていたのも否めない。
多分、鈴木先輩がこれから話してくれるであろう、私がその時には未だ知らない“旅館”のこと……あの空間に支配されていた自分。
まだ、あの空間の“重さ”が肌に残っていたから。
同時に、「ここにいるのは、かなり強いね」と、あの旅館で言った森田先輩の言葉も思い出されていた。
それから、鈴木先輩は、少し大きく息を吸ったような感じだった。
そして、「ふー」と息を吐き……。
私の知らない、私にとっては“空白の時間”について話してくれた。




