* 再 来 其の二 * 1
自分の耳を疑ったことは言うまでもなく……。
「席を外しているとかお休みとか、外出とか出張とか……じゃなくてですか?」
“いない”に含まれる可能性があることを思いつくだけ羅列していた私だった。
「そもそも、在籍していないって意味」
「だって、旅館の予約とかパンフとか送ってくれたんですよね?」
「うん。名刺も入ってた」
「名刺って在籍していないと作れませんよね!」
「ロゴも入ってたしね」
「お話したんですよね!直接!」
「したよ」
私の慌て振りに反比例するかのように、やけに淡々と答えている鈴木先輩。
「……それって……」
それ以上の言葉が続かない私であった。
「考えれば、その時から既におかしかったんだよね……気付けばよかったんだけど」
「普通……気付かないですよ……普通の会話とかやり取りだったわけですし……」
「そうなんだけど……」
淡々とした口調だった鈴木先輩ではあったけれど、その時は小さな声で呟いた。
「で、インターを降りた時に、道に迷ったじゃない?普通だったら、ああいう時って、旅行会社とかに聞くんだけど」
「いつもの先輩なら……そうですよね……」
「何故か、あの時、そのことも思い浮かばなかったのよ。私も変だったんでしょ?」
「まぁ……ちょっと……」
あの、彷徨っていた時間、鈴木先輩の言動が、私たちをイラつかせていたことが思い出されていた。
「森田さんも言ってたけど、呼ばれちゃったのは確実みたい」
「……みたいですね……」
「それで、説明しても通じないだろうから、その地域担当の他の人へ取り次いではもらったんだけど、記録もないんだって」
「…………!?」
「それに、その地域担当って、今朝、電話に出たその人ひとりだけなんだって」
「……ぇ……!?」
また、俄かには信じることができない事実の連続。
「そんなことって……」
「支払いは現地清算にしていたし、お金も払わないで出て来ちゃったし……もっとも、あれだけのことがあったんだから払う義務もないんだけど、後々、面倒になっても思って、よく調べてもらったんだけどね」
「なかったん……ですよね……」
鈴木先輩は軽く頷いただけだった。
「それで、仕方なく旅館へ電話したのよ。嫌だったんだけどね……また……ね」
先輩が言った意味。
あの黒電話越しの老婆の声のこととすぐに判った。




