* 再 来 其の一 * 5
向い合せになった鈴木先輩は、母がお茶を入れに行っている間に、「さすがに詳細まではお話できないけど、大体のことは私が話すから」と言ってくれた。
ちょうど、私が母に旅行でのことを話そうとしていた時に、鈴木先輩が押した玄関のチャイムが鳴ったことも偶然!?
「あ、そうだ……お母様、そういうお話、大丈夫?」
思い出したように鈴木先輩が聞いてきた。
「母も、霊感はありますから」
「そっか。よかった」
普段、よい意味で饒舌な鈴木先輩も、“あの”出来事を話すのは躊躇いがあったようだった。
私でさえ躊躇われたこと。
当然。
それでも、こうして自宅にまで来てくれたことは、本当に有難くて涙が出そうだった。
母がリビングに戻ってくると、鈴木先輩は、旅行先でのことの次第を話してくれた。
主には、行きに道に迷ったこと、その時に遭った出来事、旅館での怪現象のいくつか。
ここには、森田先輩と私だけが見た不倫のカップルのことはさすがに話には出なかった。
そして、ガスのことと、私がガス中毒になった経緯。
もちろん、フロントへの電話が通じず、やむを得ず警察を呼んだ経緯も含まれていた。
まだ、私へは知らされていなかったその後のことは話さずにいてくれたようだった。
鈴木先輩の話を最後まで黙っていた母が、口を開いた。
「その旅館、本当にある旅館なの?」
「え?」
鈴木先輩と私は、思わず顔を見合わせた。
「本当にあるって……!?」
私は、すかさず訊いていた。
「鈴木さんのお話からね、何となくだけれど……ないような感じがして」
時々、母の“勘”が鋭くなる時がある。
霊感のような時もあれば、第六感的な時もある。
その時の母の言った言葉が、霊感からなのか、人間の第六感からなのかは、区別はつかなかったけれど、それでも、その母の“勘”は、いつも驚くほど、的中していた。
母のその言葉を俄かには信じることが出来ない私たちがいたけれど、あの旅館そのものに強く支配されているかのような感覚を覚えた私がいたことも事実。
老婆ではなくて……旅館が!?




