* 再 来 其の一 * 2
「車の中で話す」と言っていた、私が診療所にいる間の先輩たちのことについては、鈴木先輩も森田先輩も話そうとしなかった。
何となく聞いてよいものかどうか迷ったけれど、私たちが降りるインター近くになって思い切って聞いてみた。
「私がお部屋を出た後……何があったんですか?」
私の問い掛けに、先輩ふたりは黙っていた。
「あの……」
「今度、話すから……」
後部座席から森田先輩が言った。
鈴木先輩は黙って車を運転しているだけ。
私は、そう答えた森田先輩の言葉が何となく腑に落ちなかったけれど、それ以上、聞くことはやめておいた。
インターを降り、いつもの見慣れた一般道が現れた。
その時は、「本当に帰って来れたんだ」という安堵が私を支配していた。
「香里ちゃんちまで送るからね」
高速に乗ってから、一度も口を開かなかった鈴木先輩がそう言ってくれた。
私は、その言葉が凄く嬉しかったけれど、先輩たちも相当な疲労がたまっているはず。
すかさず、「父に迎えにきてもらいますから」と言っていた。
「でも、朝、早いしさ」
「大丈夫ですよ」
そう言って、私はジャケットのポケットへ入れてあった先輩たちが旅館から持ってきてくれた携帯を取り出し、家へ電話を入れた。
いつも朝が早い母がすぐに出た。
電話が繋がったことだけもホッとしていた私。
チラッと森田先輩の方を見ると、同じように安堵の表情を浮かべていた。
運転している鈴木先輩も同じ。
きっと先輩たちも、まだ、あの空間での出来事から完全には抜け切れていなかったに違いない。
その安堵の表情からすぐに判った。
私は軽く事情を話し、父に塾の本校のある、行きに3人が待ち合わせた駅まで迎えに来て欲しいことを告げ、電話を切った。
「お父さん、大丈夫だって?」
少し、心配そうに鈴木先輩が聞いてくれた。
「はい。大丈夫です」
「何だか、責任、感じちゃうな……」
「そんなことないですよ!」
「誘ったの、私だし……さ」
「誰の責任なんてないですから」
かなり落ち込んだような声でそう言っていた鈴木先輩へ、一生懸命に答えていた私がいた。
本当に誰のせいでもない……。




