* 再 来 其の一 * 1
帰りは、行きのように道に翻弄されることもなく、すんなり高速のインターへ着いた。
私がお世話になっていた診療所から15分くらいだったので、あの旅館からは30分くらいだと思う。
行きにインターから旅館まで何時間もかかったことは、その時となっては、もう新しい記憶という感覚ではなかったけれど、全ての始まりといっても過言ではない。
あの、山中とも街中ともわからずに彷徨っていた時間は、やはり鮮明に思い出されていた。
診療所から高速道路のインターまでの間、小さな商店街を通った。
時間が時間なだけに、どの店も閉まってはいたけれど、見覚えはあった。
行きにインターを降りてすぐに、一度だけ通った場所。
その商店街を過ぎてすぐに、方向感覚が全く失われてしまったかのように山道を彷徨い続けたのだった。
あの赤い屋根のドライブインや「ようこそ○○温泉へ」という看板は一度も見ることはなかった。
「こんなに近かったんだ……」
運転席の鈴木先輩がボソっと言った。
やはり、鈴木先輩も同じことを思っていたに違いない。
少し振り返って後部座席を見ると、森田先輩も辺りを見回していた。
たぶん、あの看板がないことについては、先輩たちもかなり不自然に思っていたと思うけれど、誰もが、それを口にすることはなかった。
その鈴木先輩の一言の他は、3人の誰もが口を開くことなく、ただインターへと無事に着けることを祈っていたはずだった。
そして、インターから関越道へ乗り、東京方面へと車を走らせていた。
途中、朝日が昇り始め、私たちを明るく照らした。
あの得体の知れない暗闇から抜け出し、眩しい朝日を浴びた私たちを乗せた車は、その光を受け、ただひたすらまっすぐ続く上り車線を走っていたのだった。




