67/78
* 逃 避 * 7
座席の位置は、帰りは私が助手席へ座らせてもらった。
山道を通るため、後ろの座席では気分が悪くなってしまうかもしれないという先輩たちの配慮だった。
その時、私は気付いた。
荷物が異常に少ない。
「先輩。お荷物とか……」
「最低限のものしか持って来なかったのよ。捨ててもどうにかなるものは置いてきちゃった」
「え?」
浴衣はともかく、荷物まで置いて来ないといけない事態って、一体……。
「香里ちゃんのも適当に判断しちゃったけど……携帯とお財布とか、香里ちゃんが貴重品入れで持っていたポーチは持ってきたけど」
「あ、それはいいですけど……ありがとうございます」
その場ではそれだけ言った。
フロントガラス越しに前方の空を見ると、もううっすらと明るくなり始めていた。
まだ朝日は姿を見せてはいなかったものの、夜中の真っ暗から比べたら、かなり明るくなっていた。
薄いグレーと青色ま混ざったような。
車の時計を見ると、5:27とあった。
「もう朝ですね……」
ふとその言葉が出た。
あの旅館でずっと待っていた朝。
その朝が私たちを包んでいた空間は、夢でも幻でもなかった。
>>* 再 来 * へつづく




