* 呪 縛 * 3
何となくだけれど、目をつぶっている自分がいて、でも、目を開けた自分がいたようだった。
かなり他人事のようだけれど、本当にそのような感じであった。
すると、すかさず森田先輩が声を掛けてきてくれた。
「香里ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫です」とも言葉では言えない状況。
とはいえ、全く大丈夫ではない。
首を横に振るのが精一杯だった。
「……そんなに気持ち悪い?」
鈴木先輩の心配そうな……困ったような声。
その時も、ただ頷くことしか出来ずにいた私がいた。
一体、私に何が起きているの?
ただ、物凄く気分が悪いことだけが認識出来ていただけで、後は全くといってよいほど、自分が置かれた状況を判断することは不可能だった。
たぶん……と、また他人事だけれど、たぶん、目を開けた私の目に入ったのが部屋の天井だった。
「あれ……」
幾分、吐き気が治まった感があった私は、何となく、そう言葉にしていた。
その声が聞えたらしく、森田先輩が心配そうに私の顔を覗き込んで来た。
「ちょっと、香里ちゃん!どうした?」
「え……?」
気分が物凄く悪いことだけで、後は自分が置かれている状況が全く理解できずにいた私は、そう答えることしか出来なかった。
「やだ……この子、わかってないみたい」
今度は鈴木先輩が覗き込んで来た。
「え?なん……」
そう言い掛けた途端、また吐き気に襲われ、言葉にならない私がいた。
一瞬、手で口を覆っていた。
「やっぱり、気持ち悪い?」
また、ただ頷いただけの私……といっても、頷くのも辛いくらい。
「どうしようか……」
先輩ふたりの声。
「話だけは聞ける?」
森田先輩が、私に布団を掛けながら言った。
軽く頷くだけの私に、森田先輩が事情を説明してくれた。
「気付いたら、また香里ちゃん、寝ちゃってたのよ」
『え?』
意外すぎる言葉が耳に入って来た。
「しばらくガスとかのこととで、お部屋の様子をうかがってたじゃない?で、香里ちゃんに話しかけたら、返事がないから見たら、また寝ちゃってたのよ」
確か、ガスの濃度がどうとか話をしていたことまでは覚えている。
次に説明に入ったのが鈴木先輩だった。
「で、さっきのお部屋とかでも私が無理矢理、起こしちゃったりしたし、色々、疲れてるんだと思って、寝かせておいたの」
続いて森田先輩。
「もっとも、また急に寝ちゃったから、心配はしてたんだけど……」
ふたりの先輩が交互に説明をしてくれている様子で、私は天井を見ていただけという状況は判った。
横になっていたんだということも……。
それこそ、変すぎる感覚。
先輩たちの話を聞いている間、また少し、楽になったので、聞いてみた。
「何か……えっと……また変でした?」
「香里ちゃんは寝てただけどね……段々、顔色が悪くなるのがわかって……ね」
鈴木先輩がそう言って、森田先輩を見た。
「うん……ガスがちょっと強くなってきたみたいだから、香里ちゃんに話し掛けたんだけど……とにかく顔色が悪いというか、真っ白になっちゃって……」
その言葉から、先輩たちが私を気遣ってくれていた意味が判った。
「今もまだ……なんだけど、大丈夫じゃないよね」
森田先輩が私の顔を覗き込んだ。
「ガス、臭うでしょ?最初より」
続けて鈴木先輩がそう言った。
「ガス……ぁ……!」
「強くなってるでしょ」
「はい……」
「寝てると危ないんだけど、起きられる?」
本当にガスの臭いが充満している。
森田先輩の言うように、身体を起こそうとした。




