* 潜 在 * 7
「……わからないよね……このお部屋、寝る前にも話したけど、全く変な気配はないし……今も……ね」
森田先輩はそう言うと、私の方を見た。
私は軽く頷くことしか出来なかったけれど、それでも、“何か”が私たちの周りを支配していることは強く感じていた。
それが何なのかは、本当に全く判らなかったけれど……。
「それからよ!」
いきなり、鈴木先輩が大きめの声で言葉を発した。
その言葉に思い出したように、森田先輩も「あ、そうだった」と、今度こそという感じで、本題を話し始めたのだった。
森田先輩の話によると、こういうことだったらしい。
鈴木先輩が電気を消しに行っている数秒の間に、突然、プツリと記憶が途絶えてしまったように、自分も深い眠りに落ちたようで、何かの夢を見たということ。
その夢というは、ほぼ幻影に近いようなぼ~っとした感じの夢で、ストーリーなどは覚えていなく、ただ、深い緑色の靄がかかっているような風景があったことだけは覚えている。
その空間は、かなり安らかで空気も澄んでいたという。
その中に、無数の人々の群れがあり、その群れが集団になって森田先輩の方へ近寄ってきて、しきりに何かを訴えるような、助けを求めるような感じで手を差し伸べてきていた。
その手の数も半端でない数。
必死でそこから逃れようとするけれど、今度は無数の手が森田先輩の足をつかみ、ひっぱり、そこから動くことも出来なくなってしまっていた。
何か、沢山の人の言葉が耳についたけれど、その中で、はっきりした言葉がある。
それが「イクナ」だったということ。
夢の中の森田先輩は、その言葉に思わず大声で叫び、目が覚めたという。
その夢の間、時々、ほんの僅かの意識が戻り、私たちを起こそうと思ったけれど、金縛り状態で、夢以外でも身動きが出来ない状態で、またすぐに、深い眠りのような状態に陥り……を数回繰り返していたということだった。
森田先輩が淡々と語るその内容を聞いて、私は、自分の顔が青ざめていくのが判った。
鈴木先輩も、ずっと枕を抱えたまま、動こうとしない。
ゾッとするとか、そのような感覚を完全に通り超した。
「……ごめん……」
小さな声でそう言った森田先輩。
その言葉で我に返った私がいて、「出ましょう!」と布団の上へ立ち上がっていた。




