* 潜 在 * 2
ずっと聞こえていたのかもしれなかったけれど、なにせ、突然、深い眠りから起こされ、いきなり鈴木先輩の興奮した声での話に耳を傾けていたので、気付かなかったみたいだった。
「あ……あれ……ですか?」
「うん……」
すぐに森田先輩の寝ている一番奥の布団のところへ行きたい気持ちはあったけれど、鈴木先輩も私も、どうにも身体が反応しない。
ふたりで顔を見合わせているだけの時間が続いた。
「ぎゃー!」
突然、森田先輩の叫び声が聞こえた。
鈴木先輩と私が飛び上がったのも当然。
「……香里ちゃん!」
鈴木先輩は、すかさず私の後ろは回って、私の背中を押した。
「ちょ、ちょっと……鈴木先輩!何やってるんですか!」
「だって」
「やだよ、先輩」
私たちは、お互いに背中を押し合って先頭を争っている、お化け屋敷にでもいる子供同士の様子。
「やめてーーーー!!!!!」
いきなりの森田先輩の声に、ふたりとも我に返ったというか、ことの重大さを認識したというか、“子供”の私たちではいることが出来なくなっていた。
それまで、背中を押し合っていた私たちは、同時に森田先輩の布団のところへ這って行った。
布団が3枚に並べてひいてあったこともあり、腰が抜けているような私たちはそのような感じでしか動くこと出来なかったということ……。
「森田先輩!!!」
先ず、声をかけたのが私。
「森田さん!!!」
続けて鈴木先輩。
揺すっても、大きな声をかけても、いっこうに目を覚まさない森田先輩。
相変わらず、不気味ともいえる叫び声や変な呪文のようなものをブツブツ言っている。
叫び声や呪文のような言葉を発してはいるものの、その顔は意外ともいえるような穏やかな表情。
苦痛に表情を歪めて……とは程遠い感じ。
仰向けになっている様子にも動きもなく、ただ口からの声を発しているだけ。
顔色も悪くない……何も言葉を発していなければ、本当に気持ちよさそうに熟睡しているといった感じだった。
その様子が、私たちを余計に恐怖へと誘っていたことは間違いない。
「ちょ、ちょっと……」
鈴木先輩が、恐怖に満ちたような顔つきで私を見た。
「……無理にでも……」
私がそう言いながら、森田先輩の身体に手をかけようとした瞬間。
それまでつぶっていた森田先輩の目が突然開いた。
「やっ……!」
思わず、隣にひいてある鈴木先輩の布団の上へと飛び移るように、森田先輩のところから遠ざかっていた。
私にしがみつくように鈴木先輩も……。
部屋の電気はついていなかったものの、部屋全体は真っ暗でもなく、綺麗に言えば“窓からの月明かりに照らされて”という表現が合うくらいの雰囲気。
少し遠目からも、森田先輩の表情は窺うことが出来ていた。




