* 潜 在 * 1
森田先輩は、「やれやれ」というような表情に苦笑いをプラスしながら私をみると、「寝ようか」と小さな声で言い、自分の布団へと戻っていった。
一番奥側の窓のところへ森田先輩。
ドア側が私……実は、またジャンケンで負けたのだった。
真ん中が鈴木先輩という並び順。
それから、いつ眠りに落ちたのか……今になってみると、自分の布団に入ったことすら覚えていないくらい、すぐに深い眠りに落ちていた私がいたみたいだった。
それからどのくらいの時間が経ったのか。
「……ゃん、……ちゃん」
何処からか……闇の奥からのような……そのような小さな低い声が深い眠りの中に居た私の耳に入ってきた。
「……ん……」
ほぼ顔までかけていた布団上げ、うっすらと目を開けると目の前には人の顔が。
「ひぃ」
声にならない声をあげた私。
すぐさま、布団を被ってしまっていた私。
「香里ちゃん!私だよ」
そう言った聞き覚えのある声は、鈴木先輩の声だった。
「あれ……」
私は、頭まで被っていた布団をそっとずらし、目のあたりまでさげ、もう一度、目を開けた。
良く見ると、そのような私を覗きこんでいたのはやはり鈴木先輩だった。
「鈴木せんぱ~い。びっくりさせないでくださいよ~」
私は、ほとんど鳴き声に近い声でそう言っていたような気がする。
そのような私を見た鈴木先輩は、普段であれば「お化けにでも見えた?」というような冗談を言う人ではあったけれど、その時は違った。
電気もつけていない暗闇の中ではあったけれど、私を覗きこんでいる鈴木先輩の顔をよく見ると、何やら尋常でない様子。
「どうしたんですか」
私は、布団から身体を起こした。
「森田さんが変なの」
「……変……って?」
まだ、半分、寝ぼけていた感のある私は、当然のようにその自体をすぐには把握することは出来ないでいた。
どちらかといえば、昼間の温泉からのことから、森田先輩が「鈴木さんが変なの」という言葉の方が信憑性があったから。
「あのね!」
そう言った鈴木先輩の言葉は興奮していた。
「さっき、何処からか変な声が聞えて目が覚めちゃってさ!そしたら、隣に寝てる森田さんが変なうめき声、あげてるのよ!」
「夢……とか見てるとかじゃなくて……ですか?」
「そうなのかもしれないんだけど……ちょっと違って……なんて言うか、奇妙なのよ!」
「奇妙?」
鈴木先輩と私がそう話している間に、森田先輩が寝ている方から、本当に妙な声が聞えてきた。




