* 幻影 其の一 * 4
鈴木先輩の話を聞き、私も1階での出来事に思っていたことを話した。
話さずにはいられなかった……!?
「なるほどね……香里ちゃん、ひとりで行かなくてよかったよね」
森田先輩は腕組みをしながら言っていた。
「ほんとですよね……ひとりだったら……」
本当は想像もしたくなかった。
「結局さ、本来は携帯は通じるはずが、これも一時的に通じなくさせて、香里ちゃんを呼んでたんだね。香里ちゃん達が出ていった直後にメールの着信がなったんだもん」
「ぇ?直後……だったんですか?」
「うん。ほんと、ドアを閉める音がしてすぐ。呼び戻そうと思ったんだけど、彼へ電話するんだったらと思って、やめちゃったのよ。鈴木さんも一緒だったし」
「やだ……」
「それが鈴木さんも行っちゃったものだから、あちら様もびっくりしただろうね」
軽い感じでそう言った森田先輩だったけれど、顔つきは真剣だった。
私は、また思い出した。
鈴木先輩が「大丈夫。私には近づけないから」と言った言葉を。
先輩の指示で、私は音のする方は見てはいなかったけれど、その“音”と果敢に向き合っている鈴木先輩の姿が頭の中だけに浮かんでいた。
「……私の大きな声で止まった訳じゃなかったんですね……」
「そうだね、たぶん」
ひとしきり話し終わった後、森田先輩と私との会話を聞いていた鈴木先輩が言葉を挟んだ。
「あの時、やっぱり、光みたいの出してたのかな……」
「だから、止まったんじゃない?」
「だよね」
「もっとも、急に止まったっていうなら、香里ちゃんの声が決定打だったかもしれないけど」
「あ!」
いきなり、何かを思い出したように、鈴木先輩が声を上げた。
「な、なに!」
「びっくりした~」
それまでのことを、ゾッとしながら話していた私は、ビクっとする感じさえしていた。
「私さ……」
それまで饒舌なまでに自分のことを説明していた鈴木先輩ではあったけれど、また、少しだけ口ごもった言い方をしていた。
「インターを降りた時から、変だったんでしょ?」
「ああ……そうね」
「この旅館に来てからも、おかしかったんだよね?」
「うん……やけにテンション高いっていうか……」
「それもあるし……あと温泉の時……とか」
言われてみたら、鈴木先輩から、私達が持っている霊感とは逆の使い方をしているらしいという話を聞くと、矛盾がある。
鈴木先輩が“とり憑かれる”ということはないはず。
「ねぇ、この旅行の場所を決めた時、どんなだった?」
「即決したけど」
「今回はさ、鈴木さんが呼ばれちゃったんだよ。何かいつもの力が弱くなってとか……最近、かなりハードだったでしょ」
「まぁ、ハードだったけど……関係あるの?」
「いつもの自分じゃなかったとか……何かボーっとしてたとか、そういう“スキ”みたいのがあると陥ること多いんだよ」
森田先輩らしい、専門的な説明。
「あと……」
「まだ、あるの?」
鈴木先輩が慌てるような怯えるような感じで、森田先輩が言い出したことに続けていた。
「あとは……これは、確かじゃないけど、何か救いを求めている霊がいて、鈴木さんを通して私たちも呼んだとか……かな」
森田先輩が付け足した、この説明の方が頷けた。
憑依体質。
正に、それとシンクロしていたから。
私は、これまでの様々な出来事をひとつひとつ思い出していた。
思い出せば出すほど、納得がいかない不可解の事実があり、いくら霊感が強い私でも経験したことがないことも起こっていた。
鈴木先輩が呼ばれたにせよ、私たちが呼ばれたにせよ、その呼んだ“何か”の既に支配下にあるような状況。
「……なんか……凄いことになってません?」
「確かに……」
私達3人は、黙ってしまった。




