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異 空 間  作者: 本城沙衣
33/78

* 幻影 其の一 * 3


「兄とかその友達とかが霊障に合っちゃって、かなり凄いことになった時、どうも私が救ったとかって、母に話したらしくて」


「救った?鈴木さんが?」



先輩ふたりの話を黙って聞いていた私だったけれど、鈴木先輩の口から、「強い霊」とか「霊障」とかという言葉が出て来ていることが不思議な感じがしていた。


普段から、そのような言葉にはまるっきり縁がないという印象が強い鈴木先輩だったから。


「そうなのよね……」と鈴木先輩は話を続けていた。



鈴木先輩の話によると、「救った」というのは鈴木先輩の体質が影響していたらしい。


鈴木先輩には、森田先輩や私のようなこの世に存在しないものに対し、“引き付ける”、“見える”、霊を“感じる”というような霊感ではなく、その逆の力が備わっているということだった。


鈴木先輩がお兄さんと心霊スポットへ行った時に、そこいた全員が霊障に遭い、気を失ってその場に倒れたり何かにとり憑かれたように、やはりそこにいた全員が気が変になったらしい。


山の奥だったこともあり、誰も動くことが出来ずに助けを呼べない中、微かに意識があった鈴木先輩のお兄さんが見たのは、子供だった鈴木先輩の身体の周りが光り、そして鈴木先輩が誰かと話しているような仕草をしていたとか。


その話を聞いたお母さんが、それまで何度かそのような鈴木先輩を見たことがあったということもあり、知り合いの霊媒師のところへ先輩を連れて行ったということだった。


その時に言われたのが、強い“何か”によって守られているということであったらしい。


子供だったので、あまり興味なく聞いていたので、その強い“何か”ということは覚えていなかったし、改めて聞いたこともなかったらしいけれど、鈴木先輩自身はご守護神様であると思っているという。


それが大人になってからも続いており、学生時代など、当時の友人たちと噂になっている場所へ行くことになっても、鈴木先輩のグループだけ無事であったとか。


更には、“悪霊”と呼ばれるような霊と遭遇した時だけ、その光を放つらしい。


人間に何の影響のない霊に対しては、その“力”は発揮されないということ。


それから、“その現場”では感じないものの、時々、これから起こることで「自分が行った方がいい」と感じる時もあるそうだった。


特に、近い関係とか仲の良い人だったりした時は特に。


「ある意味、霊感」と言った鈴木先輩の言葉にも頷くことが出来る話であった。


そして、からかいながらも私に着いてきてくれた鈴木先輩の行動も大きく頷ける出来事だった。


そういえば……私が彼へ電話をかけに行った1階。


最初は電気ひとつもついておらず、何も見えないくらいに真っ暗だったのに、しばらくするとそれほど真っ暗とは感じられず、戻ってくる時は、“なんとなく薄暗い”という表現の方が適切なくらいだったことを思い出した。


あの時は、私も必死で、暗さの度合いまで測れる余裕はなかったけれど、思えば、彼に電話をかける少し前からは、確かに“真っ暗”ではなかった。


目が慣れただけと思っていた時もあったけれど、それにしては公衆電話のボタンも間違えずに押せていたし、少し遠くにいた鈴木先輩の姿も見ることが出来ていた。


階段も足を踏み外すこともなく……。


あれも、鈴木先輩の身体から出ていた“光”のせい?


定かではなかったけれど、鈴木先輩の話を聞き、1階での出来事をその話に合わせると、あの足音よりも、“暗さ”ということの方が気になっていた私であった。


……ということは、あそこには、確かに霊がいたの?


それも、悪い霊?


瞬間、ゾッとした。



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