* 幻影 其の一 * 2
「ふたりみたいに霊感があるってことはないんだけどね……」
鈴木先輩の口から出た言葉は意外な言葉だった。
森田先輩と私は、思わず顔を見合わせた。
「……でも、どうも、強いみたいなんだ……その……ある意味、霊感……」
はにかんだような鈴木先輩のその物言いに、私達は少しだけ笑いが出てしまっていた。
何といっても、普段は、「私は、幽霊なんて全く見えたり感じたりしないし、まるっきり信じてないし!」と、変に豪語している鈴木先輩。
鈴木先輩にとっては、ある意味、勇気ある“カミング・アウト”だったに違いない。
「へぇ~、そうなんだ~」
森田先輩は、鈴木先輩をからかうような口調で言った。
そして、私を見て笑っていた。
「霊感って、いつも先輩が、「絶対にない!」って言い切っている、あの霊感ですよね」
それにつられて、私も鈴木先輩をからっていた。
あの1階での出来事を、一瞬だけ忘れている私もいた。
「えっとですね!これ、けっこう真面目なんだけど!」
「はいはい」
「もう!」
思い切って“カミング・アウト”しようとしている鈴木先輩からしたら、私達の言葉にムキになっても仕方なかったかもしれないけれど、いつもの鈴木先輩からは、私も俄かには信じがたい言葉ではあった。
「あの……どういう意味ですか?」
その場の、ちょっとした“気まずい”雰囲気を変えるように、聞いてみた。
「香里ちゃ~ん」
鈴木先輩の私にすがるような声には、また笑いそうになったけれど、この時はこらえた。
そして、急に真剣な顔つきになった鈴木先輩がいた。
「えっと……上手くは言えないんだけど……」
少し間があった。
「確かに、ふたりみたいな霊感はないんだけどね……」
「うん」
いつもより低めの声でそう話し始めた鈴木先輩の声のトーンや口調、その様子に、それまで笑っていた森田先輩も真剣になったようだった。
「小さい頃、私に何か変なところがあったらしくて、うちの親が霊媒師さんのような人にみてもらったんだって」
「変って?」
「うん……ほら、心霊スポットとかあるじゃない。兄がそういうところが好きで、私を連れて行ったらしいのよ」
鈴木先輩には、かなり年の離れたお兄さんがいた。
「そこって、当時、テレビとかでも話題になって、本当に出るらしくて、かなり強い霊もいたらしいんだど……」
「それ、何処?」
「確か、○○県の△△池……だったかな?」
「なるほどね。それで?」
少し身を乗り出している森田先輩。
興味津々というより、“霊感強し”森田先輩に戻っていたようだった。




