『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』
メイドは、槍を引き抜こうとするミネコへと視線を向けた。
「敵対……という事で、よろしいですね?」
「っ……そうでありますなっ」
ミネコは、そう話している最中も力を緩めず、槍を引き抜こうとしていた。
だがしかし、槍はまるで万力で押さえつけられているかのように、ピクリとも動くことはなかった。
「力が強すぎるでありますよっ、何処にこの力があるでありますか!?」
「私は、ディラ様に作られたアンデット……その中でも最高位に位置する存在です。ディラ様に仕え、お世話し、そしてお傍でお守りする……そこら辺のアンデットと同じと思わないでいただきたいです」
「ぐぬぬっ……やらかしたでありますよ!」
そう言って、焦るミネコ。
とても大変そうだ。
そういえばキャットは……
「あわわ、どうすればいいにゃー!」
まだ、メイドさんが刺されたことに動揺していた。
全く……
「とりあえず、もちつきな」
「にゃうっ!?」
僕はキャットの頭をぺしっと強めに叩く。
「にゃにゃ、おみゃえ!何いきなり頭叩くにゃ!痛かったにゃ……って、うにゃ?」
落ち着きを取り戻したキャットは、メイドさんとミネコが槍の綱引きをしているのを見て、呆けた顔をした。
「にゃにゃ!?メイドさんが、生きてるにゃ!?」
「遅いよ」
一周くらい。
「あれ?でも槍が胸に突き刺さって、つき……突き刺さったままにゃあああ⁉どういう事にゃぁあ!?」
「なんか、アンデットなんだって」
「ああ、ならおかしくないにゃ。アンデットぉぉぉ⁉」
そう言ってキャットはぎょっと目を見開いた。
「あ、アンデットってあれにゃよね?ぞ、ゾンビとか、そういう人間がやっちゃいけない事にゃ!」
「あーうーん?」
何かとりあえず焦ってるのは分かった。
「こ、これは、助けたほうがいいにゃ!?どっちを!?」
そう言ってキャットはあたふた目線を左右に動かしていた。
「ん?さっきまでメイドさんのこと心配してなかったっけ?」
「それは人間だと思ってたからにゃ!アンデットは……別にゃ!」
「そういう物?」
「空気を吸って吐くくらい当たり前の事にゃ!」
よくわからないがそういう物らしい。
結構会話できたけど、まあいいか。
そんなことを話していた時だった。
メイドの目が僕たちの方を向いた。
「にゃお⁉」
「お客様方、すみません。少々敵を倒してからお部屋へご案内……というわけにはいかないようですね」
ミネコを助けようとする発言を聞いていたのだろう、さっきまでの表向き丁寧な様子とは一転、どこか虚ろな、濁った瞳で僕らを見ていた。
「全く、羽虫のせいで折角の準備がすべて台無しになってしまいました……商品に傷がつくので手荒な真似はしたくなかったのですが……いたし方ありません」
そうメイドは、口をガバッと開けたかと思うと……
『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』
突然、割れるような叫び声をあげた。
「うる、さい」
「にゃにゃっ、耳が痛いにゃぁ」
そう、耳を塞ぐ僕たちがいる部屋の、塞がれた窓の外からドン……ドンドンと、まるでハンマーでも壁にたたきつけるかのような音が聞こえてきた。
「何?」
そう、僕がつぶやいた一瞬の後……
窓を突き破り無数の死体がなだれ込んできたのだった。
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