冒険者換算
キャットに吸血鬼について説明した。
と言ってもほとんどがミネコによる説明だ。
僕のは別世界の知識だからね、あってるかどうかわからないし……まあ、僕が言った説明は全部あってたから、結局は同じような感じなんだろうけど。
「にゃるほど。血を吸う知性を持った魔物にゃ……知性を持った魔物ってだけでもめんどくさそうにゃ……」
「めんどくさいどころじゃないでありますよ。さっきは最低でもと言ったでありますが。伝説上の吸血鬼の中には、国を一つ滅ぼしたような存在もいたであります。まあ、その吸血鬼も当時の教会の勇者に倒されたわけでありますが」
そう言われても、スケールが大きすぎるようでキャットはあんまり実感がないようだ。
うーん。
「さっき最低でも、兵士10人が必要?って言ってたじゃない?」
「はい!言ったであります。正確には訓練された兵士が10人という計算になるでありますな!」
「それってさ、冒険者だとどれくらいなの?」
「え?冒険者だとでありますか?えっと、そうでありますね……Cランク冒険者くらいでありますかね?」
僕がそう尋ねると、ミネコは少し考えた後そう答えた。
Cランク冒険者、いまいちピンとこないけど……リュウよりは弱いのかな?
僕がそう思っていると、キャットは何処か焦ったように冷や汗を流していた。
「どうしたのさ?」
「Cランク冒険者くらい……とんでもないにゃ!?」
「とんでもないんだ」
「やばいにゃ!」
「やばいんだ」
よくわからないけど、そうらしい。
「まあ、そんな心配しなくても大丈夫であります。なんてったって、ここにはこの獣人王国の騎士がいるのでありますから!」
そう言って胸を張るミネコだったが……
「強いの?」
「もちろんであります!訓練された兵士一個小隊くらいでありますね!」
そう言って堂々としているが、分からない。
「……冒険者換算だと?」
「B級くらいは……あるであります?」
「なんで疑問形なのさ」
ちょっと不安だ。
まあでも、B級冒険者くらい……
いや、強さが分からない。
「それは心強いにゃっ!」
どうやら頼りになるっぽい。
「ええ、任せるで……ん?」
ミネコの耳がピクリと動いた。
「これは、この部屋に誰かが近づいてるであります!」
そう言っているうちに、僕の耳にも足音が聞こえるようになった。
「うーん、この屋敷であったのは、メイドさんと、あの……えっと、ドラだっけ?」
「ディラにゃ」
「ああ、それだ」
だから、その二人のどっちかだろう。
とはいえ、ディラに関しては、メイドさんに色々任せていたのを見ていると……こっちに近づいてるとは考えづらいね。
「メイドと、ディラ?でありますね」
「そうそう」
「ディラっていう人は、この館の……もしかして、主でありますかね?」
「ん?ああ、メイドさんはご主人様って言ってたけど」
そう答えると、ミネコは「なるほどであります」とじっと扉を見つめ、槍を構えていた。
「そのディラっていうのが、吸血鬼っぽいでありますね……」
ジッと、穴が開くほど扉を見つめるミネコは、静かに足を開いていた。
「にゃ?そんな警戒しにゃくても……メイドさんは良い人だったし、ディラさんもいい人だったにゃ。話せばわかる……にゃ?あのー聞こえてるにゃ?」
そう、キャットが声をかけるが、ミネコは瞬き一つしない。
これ、俗にいうトンネルって状態かな?ゾーンに入ってるみたいな。
「でもまあ、被害が出てるんだったら、吸血鬼は話が分かっても討伐対象なんじゃないかとは思うけどね」
「それは、そうかもしれないけどにゃ。けど、二人はご飯くれたし、お風呂も入れてくれたにゃ。一度話してみるべきだと思うにゃ!」
「そうかな?」
「そうにゃ!というか、なんでお前はそう、殺す方に立ってるにゃ!あんなに良くしてもらって、人でなしすぎるにゃ!」
「そう言われても、そもそもこの館に入ってから……」
そう全てを言うより早く、部屋の扉が開いた。
扉の先には、メイドさんが立っていた。
汗一つかかず、微動だにせずそこに立っていた。
「おや?お客様……でございますか?気が付かなくて申し訳ございませ……」
彼女は部屋の中にいる、ミネコを視認すると、わざとらしい驚いた顔をし、ぺこりと腰を曲げる。
そんな彼女の懐へと、一瞬で人影が入り込み……
「とりあえず、まずは一旦話して……って、にゃにやってるにゃああああ!?」
気が付いた時にはミネコの槍がメイドの心臓を突き刺し、キャットは絶叫を上げたのだった。
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