吸血鬼
二人の部屋の準備していたメイド……メイデンは、パリーンとガラスの割れた音を耳にした。
「……何の音でしょう?」
この屋敷には一応グラスなどガラス製のものは沢山ある。
「お二人には自由にするように言っておりましたから、もしかしたらキッチンの方へ入ったのかもしれませんね」
そうだったとしたら少し困ると彼女は考えた。
何故なら、主人お気に入りのグラスに食器……そして、今度お客様に出す高級ワインなど、割られたら困る物がたくさん置いてあるからだ。
割られたら困ったことになる。
「しかし、キッチンがあるのは一階ですし。音が聞こえたのは二階……」
少し不安に思ったが、問題はなさそうだと彼女は判断する。
「……ああ、ですが。お二人に怪我があっては困ります。確かキャットさんと、そう言えば名前を聞いていませんでしたね」
会話の中からキャットの名前は思い出した彼女だったが、そう言えばもう一人の少女……いや、少年の名前を聞いてないことを思い出した。
「まあ、名前は聞いておかなくてもいいでしょう。どうせすぐに……」
そう言って彼女は、二人が泊まる予定の部屋を出て行った。
重苦しい、その外側からしか鍵をかけることができない扉を閉め。
「お二人は、コリンズ様宛の大切な商品になるのですから」
無表情の死んだ瞳でつぶやいた。
◆◆◆
一方そのころ、三人は。
「この館の窓はすべて内側から塞いであって光が入り込まないようにしてあったであります。これは、太陽の光が弱点の吸血鬼の根城の典型……この館はおそらく吸血鬼の館である………」
「ふむふむ、それにしてもこの剣綺麗だよね。ん?なんか柄に書いてあるえっと……これ何て読むの~」
「なるほどにゃー……って、剣を振りまわすにゃ、危ないにゃ!」
「なーんか、緊張感うすいでありますね……」
僕はあきれたように半眼で見ているミネコをチラッと見た。
「いやーだって、吸血鬼って言われても……実物見たことが無いからっていうか。強いの?」
「そりゃもう、強さには上下差があるでありますが、下位の吸血鬼相手をするにしても兵士10人が必要であります」
そう言われても、あんまりぴんと来ない。
何だろ、こういう時普通は分かりやすく、B級冒険者が何人必要!とか、A級冒険者の力があればーとか。
そういう分かりやすい指標があればわかりやすいと思うんだけど。
まあ、言われてもピンとこないんだけど。
「兵士10人だと分かりづらい……」
まあ、武装した大人の男10人って考えれば。まあ強いのかな?
あんまり分かんないよ。
「ほにゃー」
ほら、キャットもピンときてな……あれ?
僕はキャットの顔を見た。
彼女は、どこか間の抜けた顔というか。
ちょっと呆けた顔をしていた。
そういえば、キャットって吸血鬼が元凶みたいなことを騎士少女……ミネコに言われてもなんも反応してなかったよね?確か。
なんか、勝手なイメージだけどこういう時って現地の人間が「吸血鬼だって!?」みたいな反応するものだと思ってたけど。
「にゃーちょっと聞きたいことがあるにゃ」
僕がそう思っていると、キャットが口を開いた。
「どうしたであります?」
「そもそも吸血鬼ってなんにゃ?」
どうやらそもそも吸血鬼を知らなかったらしい。
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