あわてんぼうのサンタクロース
僕たちがそんなことをしていたら暖炉の方から、ガサガサと物音がした。
何だろうと振り返ってみれば、暖炉にパラパラとすすが落ちてきていた。
「にゃ!?何の音にゃ!?」
「うーん、もしかして、煙突の中に人がいるとか?」
「何言ってるにゃ、そんなこと」
「まっくらでありますよー!」
僕とキャットは目を見合わせ、暖炉へと視線を向けた。
「女の子の声がしたね」
「そうにゃね」
「人がいるっぽいね」
「そうにゃね」
僕たちはまた顔を見合わせた。
「あわてんぼうのサンタクロース?」
「何にゃその変な名前」
「知らないの?クリスマス前にやってくるんだけど」
「くりすます?ってなんにゃ?栗とマスでも食うにゃ?」
そんな雑談をしていたら、ドスンと何かが降ってきた。
すすがたまっていたから、黒い靄が暖炉を覆っていた。
黒い霧が晴れると、そこには、一人の少女がいた。
オレンジの髪と銀色の金属の鎧を着ているが、どちらもすすで汚れている。
そんな彼女にはこの世界で僕が見慣れた、けれど特徴的な物が生えていた。
「猫耳……キャットの知り合い?」
「なんでにゃーの知り合いだと思ったにゃ……ちがうにゃよ」
「だろうね」
そう、彼女は猫の耳に尻尾が生えたキャットと同じ猫の獣人だった。
彼女は中腰で暖炉の中からはい出すと、立ち上がってお尻を摩った。
「うぅ、お尻が痛いでありますよぉ……」
「二つに割れちゃった?」
「元からお尻は二つに割れてるでありま……ハッ⁉」
僕が声をかけると彼女は、びくりと体を動かしぎょっとした顔で見てきた。
青い瞳が、僕たちを凝視し、暫く固まった後背中に背負っていた槍を突き出した。
「この館にいるってことはお前たちが、元凶でありますか!」
「元凶って、なんの……」
僕が何か言おうとした瞬間、喉元に槍が突きたてられた。
「元凶がこんな少女だとは思いもしなかったでありますが――とりあえずその手に持ってる武器を下ろすであります」
「あ、えっと……」
武器?
武器なんて……ああ。
僕は手に持った火かき棒をチラッと見た。
「これの事?」
「それの事であります!さっさと捨てておくのでありますよ!」
「まあ別に、構わないけど……」
武器でも何でもないし、戦う気はないし……
いや、殺されかけてる気はするけど。
まあ、それはどうでもいい。
それよりも……なんていうか、可愛いな。
目の前に立った少女は、キャットとは違った可愛さ。
いや、エロさがあった。
胸はキャットほどではないにしろ、鎧が女性的なフォルムをしているからかもしれないが、女性的な丸みとふくらみがある。
細くしなやかな曲線は、運動部的な……な、何ていうんだろ?
とりあえずえっちだ。
ジッと僕を睨む顔も、必死に真面目な顔をしているが、くりっとした目に餅のようなほっぺ。そして少し太めの眉毛がどこか童顔っぽく見え……子供が必死に怖がらせようとしているようにしか見えない。
が、まあとりあえず喉元に槍が突き立てられてる状況なわけだから、怖くなくても従っておこう。
うん。
「ああ、うん。わかったよ」
そう言って僕が火かき棒を投げ捨てた。
……そういえば、僕がこんな状況になってるのに、キャットはいったい何をしているのか。
横目でちらっと見えたキャットの顔は、どこか面白そうにニヤニヤしていた。
む、あとで文句言お――
パリーン
なんかガラスが割れた音がした。
「ん?……あ」
「あ」
音につられて思わず振り返った先では、剣の入っていたガラスケースが粉々に砕け散っており、そのそばにはさっき僕が投げ捨てた火かき棒が転がっていたのだった。
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