バタ足
目の前を遮る木の枝を払い、猫耳の騎士は古びた館を見つけた。
「ここが、おそらく根源でありますか」
「ヴぁあ」
背後から襲ってきた、ゾンビの抱き着きをフラッと避けたミネコは槍で脳天を一突きした。
「やっぱり、まだ動くでありますよねっ」
そう言った彼女は、頭が半分消え失せたゾンビを見て腰から抜いたナイフを心臓に突き立てた。
「ぐぬぬ、ここまで来るのに聖水を使いすぎたであります」
そう言って彼女は苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「おそらく根源を考えれば、残っている聖水の一瓶は残しておきたいでありますが……」
そう言って額に浮いた汗をぬぐった。
「果たして、それまで自分が生きていられるか」
若干重くなった腕で、ゾンビに刺さった槍を抜きながら俯いた。
が、それも一瞬の事だ。
「いえ!自分は騎士であります!立派な猫獣人王国の騎士!この程度で負けるわけにはいかないのです!」
そういうと彼女は、ふんすっと気合を入れ、再度古びた館を見た。
古びた館は、やぶで覆われ、壁には蔦が張っている。
一見すると、うち捨てられた廃墟のように思えるが、彼女の鼻は確かにその匂いを感じ取っていた。
「おいしそうな食事の匂いがするであります……じゅるり」
ぐー
思わず、ミネコのお腹が鳴った。
「ハッ⁉いけないであります!気合を入れるでありますよ!ミネコ・ケットシー!」
そう言ってパンっとほっぺを強めに叩いた。
「っ、痛いでありますぅ……強くたたきすぎたでありますよ」
そう言ってミネコが少し涙目になっていた時だった。
「「「やめろにゃぁああああ!」」」
「ハッ⁉悲鳴であります!?」
突然館の中から聞こえてきた、女の悲鳴を聞いたミネコは館の扉へと駆け足で走って行った。
「今すぐ助けるであります!待って……カギ閉まってるでありますよおお!?」
そう言って、扉の前であたふたと立ち止まるのだった。
◆◆◆
少し時間が遡る。
お風呂へと連れていかれた僕たちは、メイドさんの手によって隅々まで綺麗に洗われ……今現在湯舟へと浸かっていた。
お風呂場は、広く、とても広く。
正に、馬鹿が描く豪邸の風呂場と言ったふうに広かった。
というか、広すぎだ。
「湯加減はどうでしょうか?」
「ばっちりだよぉ……」
メイドさんにそう尋ねられた僕は、とろけた顔をしながらそう答えた。
「いい湯だな~」
「にゃぁ……」
チラッと見ると、キャットの顔もとろけていた。
まるで液体のように……液体。
「猫は液体っていうけど、キャットは液体なのだろうか」
「にゃ~?何か言ったにゃ~?」
「何でもないよ~」
そう言って僕は浴槽の端に上半身を置いて、ぷかぷか浮かんだ。
ふむ。
なんだろう。
「バタ足でもしたい気分だ」
やろうかな?やるか。
僕は足をバタバタと動かした。
「にゃっ!?おま、やめろにゃっ!」
バシャバシャと水面が音を立て、足先が浮き上がってきた。
「ほぇ~」
ああ、なんか楽しい。
楽しすぎる、子供のころやって怒られたけど、この世界なら問題ないだろう。
「だか、やめろにゃっ!」
なんか、言ってきているが……
まあ、別にいいだろ……
「「「やめろにゃぁああああ!」」」
「ひゃっ⁉」
僕はバタ足をやめた。
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