館の主
森の中、一人の騎士が戦っていた。
「ぐぬぬ、多すぎるでありますよっ!」
「ヴぁあっぁ……」
「一体全体、何体いるのでありますかっ!」
目の前に立ちふさがったゾンビを見て、ミネコはうんざりしたようにこぼした。
「出し惜しみしてる暇はないでありますね……」
そういうと彼女は腰から小瓶を取り出し、槍へとかけた。
空になった小瓶をそこらへんに投げ捨て、ミネコは両の手でしっかりと槍を構えた。
「猫騎士槍術……柔旋風!」
そう彼女が叫んだ瞬間、槍に白い光がまとわれ……
「はぁ!」
そのまま正面に突撃した。
「ぶえええ!」
ゾンビたちはその攻撃に当たった瞬間、塵となって消えていく。
「うわぁ、流石教会産の聖水でありますな……掠っただけでこの威力とはすさまじいであります。是非ともやはり我が国と同盟を……じゃなかった!さっさと進むであります!」
そう「ふんすっ」と鼻を鳴らした彼女は、ザッザッザッと進んでいく。
「段々ゾンビが多くなってきたのであります……きっとこの先に、奴の根城があるはずでありますっ!」
気合を入れなおしたミネコはちらりとゾンビを目にし、少し思いにふけった。
「きっとこの人たちも、被害者であります……自分が絶対、無念を晴らしてあげるであります!!」
そう言って彼女の脳裏に浮かんだのは、最初に倒したゾンビが持っていた……古びた羊皮紙に書きなぐられた願いの言葉だった。
『私は死ぬ、この手紙が、誰かに拾われることを願う。助けてくれ、私の大事なあの子を。血の怪物から』
と。
◆◆◆
ところ変わって、同時刻。
忍とキャットは、食堂で椅子に座らされていた。
「にゃー……凄い豪華な部屋にゃ……」
「そうだね。他の部屋とは大違いだ」
周りを見渡してみれば、天井からはシャンデリアが垂れさがり、赤いカーペット、赤いテーブル。赤い椅子……赤い調度品、赤、赤、赤……と、ろうそく一本の光しかない暗がりながらも、分かるくらい血のような赤一色だった。
「赤が好きなのかな?」
「めがちかちかするにゃ、悪趣味にゃ……」
「そう?僕は結構いい趣味してると思うけど?」
「お前がいい趣味ならなおさらひどいにゃ」
ひどいなぁ。
「赤っていうのは情熱の色だ。生きとし生ける物皆すべからく持つ、生を象徴する素晴らしい色。……そう、まるで血のようなね」
突然聞こえてきた男の声に、僕とキャットはそちらを見た。
「……初めまして。お嬢様方。私がこの館の主……ディラ・キュラソンだ」
そこに座っていたのは……白い長髪をした、細くしなやかな、しかし筋肉質な。どこか影を感じさせる一人のイケメンだった。
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