臭い、熱い、つらい、汚い
ラシットは爆発した。
神の力はただの人間に耐えきれるものではないのだ。
世界に人間が誕生してから何度も何度も、そういう奴を見てきた。
それを意図的に引き起こしたんだ。
「いったいなぁっ!」
そう言ってラフィーは真っ黒い空間の中のけぞった。
ラシット――ラフィーの分体の一つは、人間として行動するため、人間と同じ……味覚、触覚、嗅覚……そして痛覚が存在していた。
だからこそ、爆発するとき、ダイレクトに内臓が爆ぜ、焼ける痛みと、四肢が爆散する痛みをラフィーは感じる羽目になったのだ。
「いたい、いたかったよぉ。自爆って痛いんだね。知ってたけど」
そう言って脂汗を書きながらニヤリと笑う。
「久々に感じたもんだ。肉体的な痛みって奴を」
この真っ黒な空間。
たった一人で数千年……
「もうとっくに忘れ去られた女神だけど……」
『邪神』と呼ばれる女神だけど。
「もう少し、もう少しだ……」
全ては、あれを手に入れたら、
あれさえ手に入ったらすべてが報われる。
「頼んだよ、転生者。大いなるエロスのために……私は少し寝るとするよ」
そう言って、下水を進む二人の少年少女を見たのだった。
◆◆◆
「臭いにゃ……熱いにゃ………つらいにゃぁ、汚いにゃぁ」
そうキャットが言った回数は98回……。
「臭い、熱い、つらい、汚い……どこまで行くのにゃ、もう出たいにゃ!外に!」
99回目。
「ん?」
あんまり空気を吸いたくないから、無言で口を塞いでいた僕の目の前に、うっすらと明かりが漏れてるのが見えた。
「にゃふっ、急に止まるにゃ……明かりにゃ!」
突然立ち止まった僕にぼやきを入れたキャットだったが、明かりを見てテンションが上がったようで駆けだし……
「……走ったら危ないよ?」
「にゃふっ」
盛大に顔からずっこけ、下にたまった汚水にキャットはダイブした。
「……うわぁ」
「ううっ、最悪にゃ。最低な日にゃ……臭い……熱い……つらい……汚い――最悪にゃぁ!」
あ、100回目。
◆◆◆
僕たちは下水から出て、森の中へと入った。
そして、キャットが「さすがに疲れたにゃ!」と言ったので、休むことにした。
……空を見上げれば青空が広がっている。
昨日の夜から歩きっぱなしだったのだ。
よく考えたら、僕の足もがくがくと震えていた。
……疲れてるってやつかこれ。
僕も近くの木の下へと腰を下ろした。
「すーはー」
ずっと下水の中で臭かったから、森の匂いが肺にしみわたる。
「うう、最悪にゃ。水浴びしたいにゃぁ……」
最後の最後で汚水を頭からかぶる羽目になったキャットは、そう言って涙目で泣き言を言った。
まあ、何ていうか……そうだねぇ。
「……近寄らないで」
「お前に言われるの、めっちゃ傷つくにゃ!?」
そう言ってキャットはガーンと口を開けたのだった。
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