吹き飛んじゃえ! side.ラシット
ラシットを拘束したリュウは、彼女を兵士たちへ引き渡した。
牢に入れられる最中も「久々だなー牢屋はさ」と調子を崩さないラシットに少し不気味さも覚えながら、そもそも邪神の依り代だからと複雑な思いを懐きながら……
……次の日を迎えた。
「おいっ、何時までもふざけてるんじゃない!」
「ふざけて何てないさ~適当に答えてるだけで」
「それをふざけてるというんだっ!」
現在、ラシットはリュウ立ち合いの元兵士たちの尋問を受けていた。
昨日の深夜から続く尋問は、現在正午に差し掛かっている。
「糞っ、大人しくしているから優しくしてやってるというのに……」
「まあ仕方ないですよ、相手は邪神なんですから」
「……リュウ殿」
そういうとリュウはラシットをちらりと見た後兵士に話しかけた。
「そういえば、邪神邪神って、昨日からひどいよねぇ~こう見えて信者もいる神様だっていうのにさ~」
「……あと一日もすれば、教会から護送用の兵士がやってきます。それまで牢屋につないでおきましょう」
「あれ?無視?」
無視して兵士と話をするリュウにラシットは口を尖らせた。
「それより、桃色の髪の少女と猫の獣人の痴女の二人組は見つかりましたか?」
「いや、それがさっぱり」
「そうですか……」
その話を聞いて、ニコニコしているラシットをリュウは睨んだ。
「貴方が逃がした……とか?」
「さあ?それはどうだろうね~君はどう思う?」
「少なくともお前が何かしらに関与しているとは思っているよ」
そう言った後リュウは「さて……」と兵士に向き直った。
「俺は、この後野良転生者の捜索に出ようと思います。見つかってないなら、街から出た可能性は低いでしょうから」
「そうですか、分かりました」
「では」
そう言ってリュウが尋問室から出ていこうとした時だった。
「それは困るな~」
さっきまでのらりくらりと飄々としていたラシットの声に、リュウは寒気を覚えた。
「っ……困るって言ってもこっちも仕事なので」
――殺意か?
「それはそれは、その仕事休んでくれないかい?」
「できない相談だね」
飄々とした喋り方だが、言葉の端々にどことなく殺意……いや、害意が滲んでいる。
「そうか、それなら……」
何をする気だ⁉
リュウが何かをするより早く、ラシットが動いた。
「全員まとめて……吹き飛んじゃえ!」
何処か狂気的な笑みを浮かべたラシットの身体の内側から、光が漏れ……リュウの意識は刈り取られた。
その後、爆発によって崩壊した兵舎の元へと駆け付けた救助隊によって、ラシット一人を除く全員が怪我を負いつつも救助されたのだった。




