君たちの人生に、最大のエロスを!
路地裏から大通りへ出る、町の一角。
そこから忍とキャットはひょっこり顔を出した。
「なーんか、慌ただしくなってるね」
「そうにゃね」
「何があったんだと思う?」
「爆破の犯人でも捜してるんじゃないかにゃ?」
そんな話をしつつ、一旦路地裏に顔をひっこめる。
「……なんていうか、今のうちに外に出たいんだけどな」
「そもそも、なんで今にゃ。朝を待ってからでもいいと思うにゃ」
「いや、駄目でしょ。朝まで待ってたらまたリュ……ック?に狙われちゃうよ。命」
「リュウにゃ」
そうだ、そんな名前だったんだ。
「そもそもにゃ、今の時間外に出るのは無理にゃ。日も落ちてるし……魔物が活発になるから、基本的に門はすべて閉まってるにゃ」
「……じゃあどうするか」
僕は近くにあった木箱に腰かけ考える。
「一旦街のどこかに隠れておくのがいいと思うにゃ……全く、なんでにゃーがこんな目に……」
そう言ってブツブツ言いながらも提案してくるキャットは、しょぼんと肩を落とした。
「そういってもねぇ」
本当に困った。
この町が開けた街だったらこうもならなかったんだろうけど、ここは壁に囲まれたなろう系ファンタジーの街だ。
「穴でも開いてれば、いいのにな」
「穴ならあるとも!」
「にゃっ!?だれにゃっ!?」
僕たちは声の方を振り返った。
暗がりの路地裏、そこにいたのは昼間であったあの商人。
「やあ数時間ぶりかな?少年少女!」
砂漠の国から来たような風貌の商人ラシットがそこにはいた。
◆◆◆
ラシットに連れられ数分後……
「ここだ!」
そう言ってラシットに連れられてきたのは、街を通る下水の入り口だった。
「く、臭いにゃ」
「そりゃまあ下水だからね!」
生暖かい風が、肌に触れ、しっとりとした空気が髪を濡らす。
不快という言葉で表すのが端的に言えばいいだろう。
「ここをまっすぐ行けば、街の外に通じてるはずさ!」
そういうと、ラシットは満面の笑みでサムズアップした。
「そう、ありがと~」
そう言って僕はチラッとラシットを見る。
「だけどさ、ねえラシット。聞きたいことがあるんだけど」
「なんだい?」
「なんで僕たちが逃げなきゃいけないのを知ってて、そして僕たちに手を貸してくれるの?」
そう僕が尋ねると彼女はニヤッと笑った。
「ま、分かるだろ?」
「……まあ、なんとなく。さすがに似てたし、初対面から優しかったし――最初見た時から何となくそうなんじゃないかなって思ってたけど………それ、本体なの?」
「なわけないじゃないか!」
ラシットは即答した。
「そうか……まあとりあえず分かったよ」
「わかってくれてうれしいよ。それじゃ。早めに行った方がいいよ!少しは私も時間稼ぐけど、そんなには稼げないからさ!」
「そう、無事でいてね?」
「大丈夫さ!コレがやられても本体にはダメージないからね!」
ラシットは自分の身体を親指で刺しながら答えた。
「それじゃ、二人とも……ここからが君たちの冒険の始まりだ。苦しいこともたくさんあるだろうが、楽しんで行くといい!君たちの人生は、長いようで短いんだから!」
「うん」
「にゃ?」
キャットは何が何だか分からない感じにぽかんとその言葉を聞いた。
まあ、分からなくても別にいいさ。
「キャット行くよ」
「にゃ?にゃんの話して……にゃーさっぱり分からにゃ……」
「さ、行くよ!」
「にゃにゃっ」
そう言って足踏みするキャットの手を引いて歩いていく。
「にゃにゃ、まつにゃっ!まだにゃー心の準備が……」
「人生は心の準備ができてない物さ!」
「なんかいい風に言うにゃっ!」
そう話しながら僕とキャットは二人下水の中へと入っていく。
「はは!あ、そうだ……言い忘れてた」
「何?」
僕たちは一度立ち止まり、ラシットを見た。
月を背後に、楽し気に笑う彼女は、両の腕を広げ威風堂々と告げた。
「君たちの人生に、最大のエロスを!」
と。
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