野良転生者にさらわれる
キャットは街の路地裏を走っていた。
偶に箱に躓きかけるが、その持ち前のしなやかさで避けながら走っていた。
「今日はいっぱい飲むぞー!」
「にゃにゃっ……こっち駄目にゃっ」
偶に路地裏にある酒場に向かう冒険者を見かけては、別の道を通りながら。
「あの変態が言ってたにゃ……真直ぐにしか狙いを付けれない……にゃって」
路地を走れば、少なくともしばらくは逃げ切れるはずにゃ。
忍の言った言葉は、間違いなくキャットの耳に届いていた。
走って走って、少し疲れたキャットは、近くの段差に腰掛けた。
「ふへぇ、疲れたにゃぁ……ここまでこれば一旦は大丈夫なはずにゃ」
そう言って彼女は、はぁ……と深くため息ついた。
「それにしても、まさかにゃぁ……転生者に狙われるとは、本当に今日は厄日が過ぎるにゃ」
それもこれも、シノブのせいにゃ。呪うにゃ。
「……野良転生者……にゃ」
野良転生者。それは、危険な存在であり、見つけたらすぐに通報する。
もし仮に……深く関わりを持ってしまったならば、教会によって粛清されるって話を……村にいた神父さんから教わったにゃ。
だから関わっちゃダメだって。
子供の時、悪いことしたときとか、夜遅くまで夜更かししてた時にシスターさんも言ってたにゃ。
野良転生者がさらいに来ますよ。
って。
「あれ?にゃーって、詰んでるにゃ?」
そう言ってキャットは頭を抱えた。
「にゃー、成り行きだったけど、契約したにゃ……契約って、深いかかわりって言ってもおかしくないにゃ。眷属だし………にゃ」
そう言って「ふっ」と顔を落とした。
「眷属って、いわば部下みたいな物にゃ。どうにか話したら、納得してもらえる……か分からないにゃ。そもそも最初から抹殺する気で来てたにゃ。あのイケメン」
そうキャットはそっと目を閉じた……
出会った時からおかしいとは思ったにゃ。
転生者の癖に、常識知らず過ぎるって。
「転生者ってのはわかってたにゃっ!分かってはいたにゃ!何でよりにもよって、にゃーは野良転生者を引くにゃ!?運……今日にゃーの運は尽きたきがするにゃっ!」
そうキャットが勢いよく立ち上がって「悪夢にゃぁ」と騒いでいた時だった。
「うるせーぞ!」
「にゃおっ……」
何処からともなく怒鳴られ、キャットはショボショボと座り込んだ。
静かな通りを、夜の風が走って行く。
「もう、悪夢にゃぁ……」
泣き顔でキャットが言葉を零したその時だった。
ぽんっと音がして、隣に忍が現れた。
「おっとっと」
「悪魔が現れたにゃ」
「悪魔って、酷いなあ……こっちは命からがら逃げられたっていうのに」
そう言って少し楽し気に笑う忍を見て……
見た目は可愛らしいのよにゃぁ……
そう、キャットは思うのだった。




