全ロス
「っ……もうさっさと終わらせるにゃ!」
そう言ってキャットは僕の事を抱きかかえながら歩いていく。
そう言えば。
僕は周りを見る。
うん。皆キャットに目が向いてる。
と言うか、目線が下に……
上は、僕の体で隠れてるけど、下は体で隠れてない。
つまり、パンツみたいな鎧が丸見えだ。
何なら、普通の下着以上に面積が小さい……
「……まあいいか」
別に言わなくてもいいだろう。
気が付いて無ければ、気が付いてないのだから。
「そう言えばキャット」
「……なんにゃ?」
「結局何で冒険者ギルド来たんだっけ?」
まだ聞いてなかったはずだ。
「あれ?言わなかったにゃ?……言ってなかった気がするにゃ。来た理由は、にゃーがお前と会う前に受けてた依頼の報告……薬草の納品にきたのにゃ」
「依頼の報告?」
薬草の納品って言うと。
異世界物で定番なあれの事だろうね。
でも、あれ……?
「そうにゃ、あ、あと……」
「ん?……あと?」
そう言ってキャットは首を傾げた。
「うーん、なんか報告しなきゃいけないものあった気がするんにゃが、何だったか忘れたにゃ」
「忘れたんかい。全く……どうでもいい事だったんじゃない?」
「そうにゃね、魔物関係の何かだった気がするんにゃが……」
そう言って彼女は「にゃにゃにゃぁ……」と考え込む。
「魔物、スライムとか?」
僕がそう言うと、やれやれとキャットは呆れたように言った。
「お前にゃ、もう忘れたのにゃ?あれは報告しなくても良いってさっき言ったにゃ」
「そうだっけ?」
「そうにゃ、全くアイツのせいでにゃーの装備全部なくなって……代わりにこんな呪いの鎧を……」
そうキャットがブツブツ呟いてるのを聞いて、ふと思った。
「ねえ、キャット」
「何にゃ?変態」
「持ち物、全ロスしたよね?」
「全ロス……ってなんにゃ?」
「……全部なくなったよね?」
そう僕が言いなおすとキャットは「にゃ?」と首を傾げた。
「そうにゃが、何が言いたいにゃ?」
「薬草って、あるの?」
そう言うとキャットは笑顔で固まった。
固まって答えた。
「全部なくなったにゃっ!」
「……何しに来たの?」
「何しに来たんだろうにゃ?」
「とりあえず帰る?」
僕がそう尋ねると。
「帰るってどこに帰るにゃ」
「あ、確かに」
「まあ、とりあえず用事は無くなったから一旦外に出るにゃ……」
そう言って僕はキャットに抱きかかえられながら、冒険者ギルドを後にし。
「にゃっ⁉まだやることあったにゃ!?ギルドカード発行してもらわなきゃ……って、にゃーー!!」
「いきなり何さ、叫んで?」
「これ、下隠れてないにゃ!」
「今更?」
叫ぶキャットを僕は胸に顔を埋めながら見上げたのだった。




