粗暴で野蛮な汗臭い酒飲み人間のたまり場
ギルドの中に入ると、まず鼻に突いたのは……うーん。
「汗臭さとか、酒臭さってあんま感じないんだね」
くんくんと鼻を動かすが、漂ってくるのはハーブみたいな、何ていうか爽やかさのある香りだった。
「当たり前にゃ、冒険者ギルドをなんだと思ってるにゃ?」
「粗暴で野蛮な汗臭い酒飲み人間のたまり場」
「失礼すぎるにゃ!?」
「こういう異世界物だと大体そうじゃないか。そう思わないか?」
「異世界物って何にゃ!?」
あ、声に出てた。
まあいっか。
そんな話をしていると、何か視線が刺さっていた。
まあ、うん。
さっきと同じような理由だろうね。
「……なんか、凄いケツに視線を感じるにゃっ」
「まあそうだろうね~」
魅力的なケツが歩いてたら誰だって見る。僕だって見る。
男なら、しょうがない。
「まあ、いつものことにゃね」
「いつものことなんかい」
叫ぶと思いきや、いきなり冷静になったキャットに僕は思わずツッコミを入れてしまった。
……あれ?なんかいつもと逆転してないかな?
「……おかしい、僕がボケのはずなのに」
「ボケというかお前は変態にゃ。ただの」
「えへへ~」
「照れるところじゃないにゃ」
そんな話をしていると、僕たちの元に近づいてくる人影があった。
顔を上げてみると、そこにいたのは筋骨隆々……ではなく、細身で細目の丸眼鏡をかけた男だった。
背中には細い棒のような物を背負っている。
「やあやあ、お嬢さんたち……どうもどうも。初めまして……だね?」
「え、ああ……どうも」
「にゃっ?」
そうそっけなく僕が返すと彼はその細めをニコリと曲げて、軽く笑顔を見せた。
「そんなそんな、そんな怖がらなくても大丈夫。別に取って食おうってわけじゃないからさ」
「そうですか……」
「ところで君、そこの後ろにいる君だよ」
「にゃ?にゃーのことにゃ?」
そう、キャットが言うと彼はうんうんと頷いた。
「そうそう、君。ここってさ、男の人多いからもうちょっとちゃんとした服着てきた方がいいんじゃないかな?」
「にゃっ……それは、まあ……でも仕方ないのにゃ!」
「ん?何か問題でもあるのかい?よかったら話を聞こうか?」
そう言って彼が言うと、後ろのキャットが「そのぉ……」とどこか色っぽいような声を……
「いや、問題ないよ?この子の趣味だから」
「何言ってるにゃお前!?」
僕がそう答えると、目の前の丸眼鏡の男は……
「え?そうなのかい?」
「うん」
「うんじゃないにゃ!?にゃーはそんな変態じゃ……」
そうキャットが否定しかけた時。
「リュウさん~教会から呼び出しが入ってますー」
と、ギルドの職員らしき人間がギルド全体に声をかけた。
「ん?ああ、はーい。すぐ行きますー。すまないね、急に声をかけちゃって……それじゃ」
そういうと彼は笑顔で片手を上げた。
「女の子二人だと何かと大変だろうけど、頑張って……」
「僕、男だよ」
「え⁉そうなのかい!?」
僕がそういうと、彼は細い目を少し開いて驚いたようだった。
「これは、女の子みたいな……男の子………さしずめ……」
「男の娘と書いて、男の娘って奴だよ」
「ああ、男の娘……なるほどねぇ」
僕がそういうと彼は少しだけ無表情になった後、また笑顔を見せた。
「そうかそうか、それはそれは、男と女。青春って奴かな?」
「あのー!リュウさんー!」
「あ、すみません。それじゃ。冒険楽しんでね」
そういうと彼は、職員の元へと歩いて行った。
「男の娘……ねぇ」
そう、再度呟いて。
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