胡椒を少々
兵士が馬車の中を覗き込むと、そこには樽が一つと、雑多な箱がいくつか置かれていた。
「待ってくれって言っても、こっちも仕事なんでな入らせてもらうぞ~」
「にゃにゃっ」
そう言って兵士が中へと踏み込むと、樽の影に、人が一人隠れているのが見えた。
猫の耳がぴょこぴょこ動く、白髪の……そう、当たり前であるがキャットがそこにはいた。
「お前は、確か新人冒険者……お前、なんて格好してんだ!?」
「にゃぁ、だから待てって言ったのにぃ……」
そう言って膝を抱えて体を隠す彼女を見て、おっさん兵士は唖然と口を開いた。
「あーなんだ、すまんな。ちょっと端に寄っててくれないか?できるだけ見ないようにするからよ」
「うぅ……分かったにゃ」
そう言ってキャットはこそこそとのそのそと馬車の端へと移動した。
「さて、あーとりあえず、お前は一旦外で待機しておいていいぞ。俺が調べるから」
「へ?あ、はい……」
そう言っておっさん兵士は新人兵士に指示すると馬車の中の確認を始めた。
とは言っても、確認する場所は一つだけだ。
「箱の中には武器と、下着……人一人隠れるスペースはこの樽の中だけだが……」
そう言うとチラッと外を見る。
外ではまた、新人兵士がラシットにからかわれていた。
「ん~?私の胸に興味あるのかい?」
「ちょ、やめてくださいよー」
「ん、もしかして。お前童貞?」
「何聞いてるんですか!?」
その様子を見て、おっさん兵士は思った。
「……早めに仕事終わらせねえとな」
そう苦笑いしながら、馬車の中から顔を覗かせラシットに尋ねた。
「おい、商人」
「ん?何かな?」
「この樽の中には何が入ってるんだ?」
「樽……?あー。胡椒が少々入ってるよ」
そう言われ、入った時の鼻についた匂いは……そうかと鼻をさすった。
「開けて確認しても?」
「正直開けて欲しくないんだが……まあ、仕方ないね別に構わないよ」
「協力感謝する」
そう言っておっさん兵士は樽を開ける。
樽の中には、黒い石のような物が大量に入っていた。
「黒コショウ………ブラックペッパーだな」
そう言っておっさん兵士はすぐに蓋を閉じる。
しけって弁償になったら困る。
胡椒は高級品だからな……よし。
「すまなかったな。時間取らせて」
「いやいや。問題ないさ。他の街じゃこれに比べてセクハラとかで時間取られたりするからね、それに比べたら速いさ」
「はは、そりゃ大変なこった」
そう言っておっさん兵士は馬車から飛び降りた。
「冒険者の嬢ちゃんも、着替え中にすまなかったな」
そう言われ、馬車の中でビクッとしたキャットはがっくりとうなだれた。
「これ、やっぱり下着だと思われたっぽいにゃ……」
と。
まあ、兵士たちには聞こえてなかったぽいが。
そんな感じに言っていた。
「それじゃ、もう行っていいぞ……服は着ろよ?」
「まあ、考えておくよ」
そう言ってラシットは、笑いながら馬車を走らせた。
街中を走る馬車の上。
「さて、早めに終わらせられてよかったよかった。新人兵士をからかえば早く終わらせれると思ったが、思った通り……全く、胡椒を調べられたら困ったことになるとこだった……」
「ん?」
「ああ、何でもないさ。とりあえずおっぱいだ」
そう言って何か尋ねようとした忍の頭にラシットはおっぱいを乗っけた。
顔がにへらととける忍。
「……さて、後はもう、どうした物かな」
そう言って、ラシットは無表情で街を見渡したのだった。




