契約破棄
キャットは忍の結び目を解くために格闘していた。
「ここを、こうして……にゃ、かったいにゃ」
そう言って、集中して解きにかかるキャットの頭の頂点が忍の鼻先に当たる。
「……すんすん、ちょっと獣臭い」
「にゃっ!?し、仕方ないにゃ!お風呂入るお金なんて……って、嗅ぐんじゃないにゃ!」
「ほげっ」
そう言ってキャットは忍に頭突きをした。
「……痛い」
「因果応報にゃ」
「へっ……」と鼻で笑ったキャットは、また結び目の解きにかかる。
「……大体、なんでにゃーがお前の腕の紐をほどかなきゃいけないにゃ……こんな、乙女に対して獣臭い何ていうデリカシーのない変態の………」
そんな感じでブツブツキャットは言う。
「そんなこと言いながら解いてくれるなんて、案外僕の事気に入ってる?」
「寝言は寝て言えにゃ……解いてくれるまで、にゃーを永遠と動かないようにするにゃんていうから仕方なくにゃ。早く街に帰りたいのに……」
「僕の事抱いて街まで運んでくれてもいいんだよ?」
「それは……それで嫌にゃ」
「絶対セクハラするにゃ……こいつ」と言うが、まあ、うん。するだろうね。否定はしない。
「そういえばさ」
「何にゃ?」
「僕が持ってるカバンの中ちょっと開けてみて」
そう言ってチラッと目線を肩から下げてるカバンに向けた。
そういえば盗賊たちはコレに対して、まったくもって興味しめしてなかったな……なんでだろ?
うーん、あんま良いのは言ってないように見えたのかな?
くたびれた感じの布を見て僕はそう思った。
「……まあいいや、確かカバンの中に短剣入ってるからそれで切って」
「へえ、そんなのがあったにゃね~……早く言えにゃ!」
そう言ってキャットはカバンの中から短剣を取り出し、ビッと簡単に紐を切った。
「おお、きれいに切れた」
「ふふん、伊達に短剣術持って無いにゃ……レベル低いけど」
そう言ってキャットはさっと目線をそらした。
「とりあえず、これで拘束は解いてやったにゃ!じゃ、にゃーはこれにてさよなら……」
「は、できないよ?」
くるっと振り返ってどこかへ去ろうとする彼女の肩を、僕は掴んだ。
「君は僕の眷族だからね。もう、離れられないに決まってるじゃないか?」
「お前、何言ってるにゃ?」
そう言って彼女はきょとんとした顔をした。
まさか忘れたわけじゃないだろう。
「ん?契約したよね?」
「契約?」
「スライムにつかまっていた時。契約。したよね?眷族の」
そう言われ、キャットは「ハッ⁉」とした顔をした。
「契約することによって、君は力を得る代わりに。僕から離れられない宿命を背負うことになる。僕は君を呼び出す【召喚】を使えるようになるし、きみのそばに転移できる【転移】を使うことができるようになる……」
僕は離れる気はないので、離れられないのだ。
「にゃっ、あれは緊急事態で、ヤバかったから咄嗟に言っただけにゃ!無効にゃ無効!契約破棄にゃ!」
彼女はそう言って焦ったように詰め寄った。
契約破棄か……
チラッとステータスを表示させてみる。
ステータスの一角。
そこには新たな追記があった。
[眷族]
名前:キャシー・ニャシー
【スキル】
≪短剣術Lv.2≫≪機敏Lv.5≫≪採取Lv.3≫
【眷族ノ鎧】
=========================================
【SR:女傑の鎧・レプリカ】
古の女戦士が身に着けていたと言われる鎧を模した物である。
【スキル】
≪筋力上昇Lv.5≫……所有者の筋力を上昇させる。
≪速力上昇Lv.2≫……所有者の速力を上昇させる。
≪防御力上昇Lv.3≫……所有者の防御力を上昇させる。
■必殺
≪波動≫……攻撃には同エネルギーを纏わせることが出来る。
=========================================
※契約破棄※
契約破棄は、一応できる。が……
しないな。うん。ぜったいにしないな。
「……残念ながら、契約破棄は絶対に出来ないんだよね~」
「にゃんだとーー!!」
僕がそう伝えると、キャットは「にゃー!」と叫び声をあげたのだった。




