私を追放した大臣、責任を取らされる
――決着から5分後。
伊集院とガリエーは縛り上げられていた。気絶していた伊集院が目を覚ます。
「有機物と無機物の区別もつかないクソガキが、良くもやってくれたな!」
「このFランク異世界人め! 1度ならず2度も! 次に会った時にはそのニヤケ面を――」
「うるさい」
喚く2人に、モミジが頭から石膏をかける。
「「ぎゃあああああああぁ!!」」
「これ以上グダグダいうと石膏で固めて美術室に飾るよ?」
「「すいませんでしたああああぁ!!」」
騒ぎを聞きつけて、この辺りを治めている貴族と、倉庫の持ち主がやってくる。倉庫には建築ギルドの建築資材が保管されていたらしい。
「――というわけで、この2人が通りと倉庫をめちゃくちゃにしました。私は悪くないです。弁償は全部この2人にさせて下さい」
モミジが事情を説明する。石膏も伊集院がぶちまけたことにして。
「うむ、事情は分かった。……おいお前達、壊した建物と駄目にした石膏の代金、キッチリ払ってもらうぞ。1Gもまけてやらないからな! 」
「「ぐぬぬぬぬぬ……!」」
ガリエーと伊集院はそろって歯ぎしりする。
「なぁガリエーさん、国に帰って国のお金で払ってもらおうぜ」
「それはならんのです! 今回の任務に失敗したら殺すと王に言われておるのです。国には帰れませぬ」
「だったらどうするんだよ! 手持ちの金じゃ払えねぇよ!」
「そうか。金がないならウチで働いて返してもらうしかないな」
――翌日。
「なんで俺がこんな目に……!」
「わたくしも不本意ですぞ、大臣である私がこんな力仕事をするなど!」
「俺だって営業職だ! こんな仕事向いてねぇ!」
2人は、建築現場の下働きをしていた。壊した建物を弁償するために、3年間建築ギルドでタダ働きすることになったのである。
若い伊集院が煉瓦を運び、ガリエーがそれを丁寧に並べて石膏を塗っていく。
「おい新入り! おしゃべりばっかりしてると昼飯抜きにするぞ!」
「「はいすみません、黙って働きます!!」」
現場の指揮官に睨まれながら、ガリエーと伊集院はせっせと働くのだった。
――
エメラルド王国の謁見の間。
黒いフード姿の男が王に報告をしている。
「――こうして伊集院は敗北。伊集院とガリエーは壊した建物の弁償のため建築現場で3年間タダ働きさせられるとのことです」
王はため息をつく。エメラルド王国の異世界人はこれで全滅。一方でガリエーの阿呆が追放した異世界人は健在。
「これでエメラルド王国は代理戦争脱落。まぁそれはもう良い。問題は、我が国が追放した異世界人が万が一にも優勝すれば、我が国は”先見の明がない阿呆どもの国”と呼ばれ一気に名声が地に落ちることだ。仕方あるまい、次の手を打つとしよう」
王が指示すると、フード姿の男が頷いて、影に溶けるように消える。
「いつまでも大きい顔はさせんぞ、綾崎紅葉」
王が口元をゆがめて笑う。
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