モンスターの素材を売却しようとしたら騒ぎになった
アーマードグリズリーの素材を売却するため、2人は街の商業エリアにやってきた。通りは様々な格好の人でごった返している。
「ねぇコロンちゃんあれ見て! すごい、肉屋に豚が丸ごと一頭吊るされてる! あ、あの魔法で模様が変わる髪飾りすっごい可愛い! 後で買おっかな♪」
武器に防具、ポーション、魔法で動く雑貨。元の世界とはまるで違うものばかり売られていて、モミジはテンションが上がりっぱなしになっていた。
「モミジ様、ここなんてどうでしょう?」
コロンが選んだのは、一際大きな武具店。看板の上には巨大な剣と盾が飾られてている。普通の見た人はその迫力に圧倒されるのだが、モミジは
「ポ○ストップになってそうな店の看板だなー」
などと口にしていた。
「すみません、モンスターの素材の買い取りをお願いしたいのですが……」
「帰りな」
「「ええ!?」」
2人が店に入るや否や、厳めしい顔の店主が出てきて追い返す。
「ここは遊びに来るところじゃねえんだ。いいかお嬢ちゃんたち、武器と防具ってのは冒険者にとって命綱だ」
(コロンちゃん、冒険者って?)
(モンスターを倒して生計を立てている人たちですよ)
店主が店内の客のほうを指さす。全員が真剣な顔で武器を眺めていた。
「ここはそんな冒険者たちが、自分の命を預ける装備を買いに来るところだ。悪いが帰ってくれ」
「まぁまぁ大将、そういわずにモノだけでも見てよ。私たち、すっごい強いモンスターの毛皮取ってきたんだよ」
「なんだ? 子供に倒せるモンスターなんだ、どうせ毛が生えたスライムの亜種かなんかだろ? そんな雑魚の素材ウチではーー」
モミジがリュックサックから取り出した毛皮を見て店主の目の色が変わる。
「なぁお嬢ちゃんちょい待ちだ、その素材はなんだ? この毛並み、色の深さ。まさか……」
「そう、めちゃ強モンスター、雨戸クリスピーの毛皮と甲殻だよ」
「アーマードグリズリーですよモミジ様」
店主が腰を抜かす。
「そそそ、そんな馬鹿な! 年に数回しか市場に出回らない素材だぞ!?」
店主の声が商業エリア中に響く。
「しかもなんだこれは……!? アーマードグリズリーの毛皮と甲殻は、普通もっと魔法攻撃で焼け焦げた状態で出回る。だがこの素材は全然焼けていない。頭の甲殻だけ何かとんでもない力で壊されているが、それ以外は無傷だ。まるで一撃で蹴り殺されたみてえだ。これはとんでもない値段が付くぞ!」
そこで店主が急に笑いだす。
「だが、それはこれがもし本物だったらの話だ。どうせ普通のクマにアーマードスライムの甲殻でもくっつけたんだろう? よくできてるじゃねぇか。大人をからかうもんじゃないぞ、お嬢ちゃんたち」
「えー、本物なのに」
「そこまで言うなら、良いだろう。今から確かめようじゃないか」
と言って店主は鋭く光る剣を持ち出してきた。
「これは先月俺が鍛えた剣。ここ数カ月じゃ一番出来がいい。湖の妖精からとある騎士が譲り受けという逸品でな、切れ味は抜群だぞ」
「え、先月自分で鍛えたって言わなかった?」
(モミジ様、武器屋というのは作った武器に大げさな逸話をつけて売るものなんですよ。突っ込むのは野暮というものです)
コロンがモミジにささやく。
「さぁ、この切れ味とくとご覧あれ、だ!」
店主が、甲殻に向かって剣を勢いよく振り下ろす。
キイイイィン!
甲高い音を立てて剣は根元からぽっきりと折れた。
店主は頬をつねって夢でないか確かめる。
「そんな馬鹿な……! やっぱりこの素材は本物だ! お嬢ちゃんたち、一体どうやってこのアーマードグリズリーを倒したんだ!?」
「そりゃ頭に回し蹴りを叩き込んで……」
(モミジ様、異世界人だとバレたら面倒事に巻き込まれやすいです。できるだけ隠しておきましょう)
と、コロンが耳打ちする。
「ええと……アーマードグリズリーには簡単な倒し方があるんです。まず森で大きな岩を見つけます」
「ほうほう。それでそれで?」
店主が真剣な目で聞き入る。
「そこでアーマードグリズリーの好物、ハチミツの瓶を開けます。するとアーマードグリズリーがヨダレをたらして飛びかかってきます。それをタイミング良く避ける! クマは勢いあまって岩に頭をぶつけて死ぬ! 一丁上がり!」
「そんなわけあるか!」
「ちなみにもう一つの好物のシャケでも代用可能だよ」
「そんなわけ! あるか!」
店主は混乱している。
「で? 買い取ってくれる?」
「もちろんだ。こんな上等な素材で防具を作れるなんて夢みたいだぜ。これだけあれば6人分は作れるだろう」
店主がウキウキ顔で素材の面積を測り始める。
「あと、この素材を一部使って防具を作って欲しいな。素材の買取金額と防具の代金で相殺って事にできない?」
「願ったり叶ったりだ! 任しておきな、最高の防具を作ってやるよ」
「わかった! じゃあ早速、コロンちゃんに合うサイズの防具を作ってくれる?」
「え!? 私の防具ですか!?」
コロンが目を丸くする。
「うん、私にはクレハの盾があるし。か弱いコロンちゃんにこそ強い防具が必要だ! というわけで大将、防御力がめっちゃ高くて動きやすくて着心地良くて夏は暑くなくオシャレ普段着としても使える防具を一式お願いします!」
「モミジ様、普段着としては使いません!」
「おう、任しといてくれ! 嬢ちゃんのサイズなら、徹夜でやれば明日の朝には仕上がるぜ」
店主が厚い胸板をドンと叩く。
かさばる素材を処分し、懐も温まった2人はホクホク顔で店を出るのだった。
お読みいただきありがとうございます!
【読者の皆様へのお願い】
少しでも面白いと思って頂けたら、ブックマークや評価をぜひお願いします!
評価はページ下部の【☆☆☆☆☆】をタップすると付けることができます。
ポイントを頂けるとやる気がモリモリ湧いてくるのです・・・!
これからも面白い物語を提供していきたいと思います、よろしくお願い致します!




